バングラデシュ式「避難訓練」

2017年2月23日(木)16:50

 
※JICA草の根技術協力支援事業(パートナー型)「コ ミュニティラジオによる早期災害情報提供を活用した地域住民災害対応能力強化プロジェクト(バングラデシュ・ハティア島)」の詳細はこちら

昨年7月1日に発生した事件後、バングラデシュへの渡航制限がかかっていました。今年に入り一部制限が解除され、約1年ぶりにバングラデシュに渡航することができました。とはいえ、今回は安全管理の観点から、事業地のハティア島に入らず、事業地にいるスタッフに首都ダッカに来てもらって、事業の進捗報告と今後の話し合いを行いました。
渡航できない期間はメールでのやりとりが中心でしたが、今回のようにスタッフと顔を合わせて様子を聞けたことで、事業がどのように進んでいるか、どのような課題があるのか、理解することができました。顔を合わせて直接聞かないとわからないことがたくさんあります。

何よりもそのことを感じたのは、現在行っている「避難訓練」の報告でした。日本で行われる「避難訓練」とは少しイメージが違い、バングラデシュでは寸劇を使って村人にデモンストレーションする、という手法を使います。実は、この避難訓練の活動が本格的に開始してからは渡航できていなかったために、実際に活動を見て確認できていませんでした。報告書を読むだけでは、本当にこの方法で村人の避難行動が変わるのだろうか、という疑念を持っており、その確認をしなければと思っていました。

会議の中で、実際の様子を撮ってきた映像を使って、担当者が報告してくれました。ラジオ放送から流れる避難の呼びかけを聞き、介助を受けて一早く避難する高齢者や障害者。ボランティアによる呼びかけを聞き、避難する人々。サイクロンが去った後には、壊れた家や倒れた木々、そして避難が遅れたために死んでしまった子どもの姿が・・・

(ボランティアがラジオ放送を聞いて状況を確認しながら、住民に避難を呼びかけるが、風が強いために
煽られて避難が困難な状況)

かなり現実に即して住民自らがサイクロン襲来時の様子を再現し、住民に避難の必要性を具体的に伝えていました。なによりも演技力の高さとストーリー性に驚きました。
この「避難訓練」の演者は、何度も練習を重ねたボランティアメンバーが半数です。残り半数は、その地域の人が演じています。つまり、演じることで避難の必要性を体感し、実際に災害が起きた時にすべきことを体験しているのです。演劇終了後には、観客の住民たち(約2000人)に対して、劇の内容を復習するクイズセッションを行い、早期避難や助け合って避難すること、そして何よりも命を守ることの大切さを再確認してもらっています。

(サイクロンが去った後、死んだ子どもを見つけて嘆き悲しむ家族)
プロジェクトコーディネーター 内山智子
     

寄付をする