回想録No.5:佐藤 征紀
創立30周年に当たって想う事々
元会長(BHN顧問)佐藤 征紀
来る9月11日に、BHNの創立30周年の記念日を迎える。私は2006年7月からBHNの支援活動に関わっているので、足掛け16年になる。
顧みれば、当時理事長を務めておりました桑原 守二様からお誘いいただき、英語が苦手で海外勤務経験もない私は大したお役には立てないだろうが、バックヤード業務のお手伝いでもと思いお引き受けすることにした。何分、桑原様にはNTT入社後の技術局勤務時から幾度となくご指導いただいたご縁があったからである。また、初代理事長・会長としてBHNの礎を築かれた名誉顧問の故淺原 巖人様、会長の信澤 健夫様は、私がグループ事業推進本部勤務時に親しく接していただいた方々であったことも幸いであった。
歳月は流れ、昨2021年の総会を持って会長を退任した。4期8年にわたり理事長・会長の重責を務めることができたのも偏に関係した皆さまのご支援・ご協力の賜物と心より感謝している。国内外の支援活動に関わって、時には辛労辛苦はありながらも、汗と感動で充たされた日々であったように思う。
これまでに関わった支援活動等について、2,3追想してみたい。
まずは、ミャンマーにおけるサイクロン被災地の支援活動である。2008年5月、南部デルタ地帯はサイクロンの襲来を受け、死者・行方不明者約14万人に及ぶ大惨事となった。スピーカーシステムを使った情報提供等生活環境改善と防災支援活動を行ったが、都合10回ほど僻地の村落にまで足を運んだだろうか。初めて取り組んだ支援活動であり印象深い。現在も、コロナ禍と軍事クーデターに苛まれながらも関係者で継続推進している。
当団体が、国内の支援活動として初めて取り組んだのが東日本大震災被災地での支援事業である。東北3県被災地の惨状を看過できず、当時の桑原会長、上原理事長は支援活動に踏み切ることを決断され、発災直後からBHNの総力をあげて支援活動に取り組んだ。私達はまずは岩手県沿岸被災地支援活動のため現地に駆け付け、兼業農家の民宿に1カ月近く泊まり込み、額に汗した日々が時折思い出される。一部の地域ながら昨年3月までほぼ10年にわたりICTを活用した支援活動を続けた。
ミャンマーでの支援事業共々、関係した皆さまの長期間にわたる弛まぬ努力に敬意を表したい。
ところで、2016年9月、NTTは国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に対する賛同を表明され、グループ各社ではSDGsの目標達成に向け取り組んでいる。当団体も上記方針に呼応して、中長期活動計画の中で「ICTを活用し、NGOの立場から、SDGsの達成に寄与する」との目標を掲げ取組むこととした。開発途上国の人材育成支援活動は1998年から開始しているが、これまでの研修に加え、より高度な人材育成を念頭に、国内の大学院留学生を主たる対象とするSDGs関連の「寄附講座」や「留学生対象の奨学金」について検討を進めた。
このような最中、「寄附講座」の開設および「奨学金」の給付について、桑原様からこの構想を推進するに足る多額のご寄附を頂いた。当協議会は「BHN桑原基金」として管理運営し、途上国の人材育成のため有効に活用していくこととしている。寄附講座は電気通信大学にて2019年度から開始し、今年度で4年目を迎える。年々受講者が増えており、喜ばしい限りで、関係の皆さまのご尽力に敬意を表したい。奨学生も政策研究大学院大学に2名が合格し、本年10月から勉学に励むことになっている。
最後に、2016年7月のバングラデシュの首都ダッカでの襲撃事件は記憶に新しい。日本人7名を含む20名が犠牲になった事件である。当団体は、当時現地で支援活動を推進している最中であり、大きな衝撃を受けた。NGOにおける支援活動において、関係職員の安全管理・危機管理を行うことは組織の義務であり責任である。この事件を契機に一層の諸施策を講じ、より安全・安心な支援活動の実践を目指している。
近年、NGOは開発援助、緊急人道支援のみならず、環境、人権等の分野において様々な活動を行っており、国際社会においてますます大きな役割を果たすようになっている。これからもその時代に相応しい役割、活動を期待したい。