令和7年5月9日 『BHN桑原基金寄付講座』 :第5回 「防災・減災におけるICT」

2025年5月15日(木)13:21

 

前学期の授業科目名 「SDGsを支える情報通信論」の5回目となる授業が、5月9日(金)に電気通信大学(以下、電通大)で実施され、対面とオンラインによる授業形式で進められました。

この日は教室に27名、オンラインで6名の学生が出席しました。なお、学生の中には後でビデオによるオンデマンドで受講する生徒もいます。

 

授業開始の挨拶をする由良 憲二名誉教授(電通大)

 

今回は、「防災・減災におけるICT」というテーマで、海野 忍/BHN副理事長による、防災・減災分野でのICT利活用についての熱のこもった講義が行われました。

 

[第5回講義]:「防災・減災におけるICT -SDGs達成に向けたICT活用事例-」  海野 忍講師(BHN副理事長) 

 

地震のメカニズムについて実演して説明する海野講師

 

講義の内容

1.日本の災害状況

まず、地震はどのようにして起こるのか、地震発生のメカニズムをプレートに模した道具を使用して説明がありました。日本の地形の特徴や、今後発生するであろう南海トラフ地震の予測と、内閣府・防災担当の防災対応検討ガイドラインデータに基づいた、BCP(事業継続計画)の説明があり、東日本大震災や能登半島地震での発災時の様子(津波や液状化現象、建物の倒壊等)が動画を使いながら学生たちに話され、地震発生から津波到達までの間に素早く避難することが大切であることが話されました。

 

津波の破壊力について発災当時の映像を真剣に見ている学生の様子

 

また、東日本大震災ではNTTグループの設備被災状況及び、津波災害に強いまちづくり(より良い復興/創造的復興= Build back Better)の事例が紹介され、被災地域における安全安心の確保に向けた取り組みが紹介されました。

 

2.日本の防災・減災対策

防災3助(自助・共助・公助)の考え方と、国の防災計画、防災対策例、首都圏外郭放水路の仕組みと設備等が紹介され、SNS等での情報セキュリティへの意識について国別でのデータを基に災害発生時の偽・誤情報への注意が必要との話がありました。

 

3.防災・減災用ICTの事例

行政による防災・減災情報伝達の仕組みや、日々発せられる様々な緊急警報が紹介され、NTTによる情報通信の強靭化と防災対策や、移動通信網の対策として発災時に他のエリアから移動電源車による電力提供の応援が可能なことが話されました。

現在、日本ではICT測位による地震・津波予測、被災物・被災者探索の技術開発が進められており、受講していた留学生の中には深くうなずく学生もいました。

 

4.ICTを活用したこれからの防災・減災

発災時にいち早く避難する情報を得るため、センサーを使った検知システムの事例として地滑り検知システムが紹介され、クラウドサービスを利用する事例として、気象庁と自治体のクラウドの利用が紹介されました。気象庁のシステムでは、雨雲の様子や降雨量等、豪雨に関する最新の気象情報等がスマートフォンで取得可能になります。自治体での活用としては、クラウドにデータを保存することにより、自らの局舎が被害にあっても住民情報の消失を防ぐことができるそうです。

防災面でのAI活用例として、まずはAIの歴史からDeep Learning技術を用いて衛星画像を解析し、土石流検知や線状降水帯による風水害予測等への活用について話され、最後はChat GPTの活用方法や、DX(Digital Transformation)時代における技術が紹介されました。

 

質疑応答の時間に質問をする学生

   

講義は終始英語でおこなわれ、教室には海外からの留学生も多く受講していました。

今回の授業に参加した留学生の皆さんは、日本で発災した災害やその対策例を学ぶことで、自国での災害に対応する、その国独自の新たな防災・減災システムとしてICTが活用されることを願っています。

 

     

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