地域コミュニティを活性化するラジオの新しい可能性 ~台東区「おばけラジオ」&川崎市「ミニカワサキ」実施報告~

2025年12月10日(水)14:19

 

BHNテレコム支援協議会では、通信技術を通じた災害支援だけでなく、平時における地域コミュニティの活性化にも力を入れています。今回は、本年の夏から秋にかけて実施された、2つの取り組みをご報告します。

 

1.台東区「おばけラジオ」

 2025年7月から9月にかけて、台東区浅草橋の銀杏岡八幡神社で開催された夜市「おばけ市」と連携し、防災イベント「おばけラジオ」を実施しました。ラジオの周波数を合わせて正確な情報を聴けるようにしてから、「おばけの声」を探すという、防災×ミステリーゲームをコンセプトとしています。

 

銀杏ヶ岡八幡神社で開催された「おばけ市」

 

いまの多くの子どもたちにとって、なじみのないラジオ。しかし、災害時には極めて重要な情報源となります。そこで私たちは、遊びの要素を取り入れました。FMラジオを手にした参加者は、周波数を88.6MHzに合わせて境内を探索します。特定のオブジェに近づくと、ノイズの向こうから「おばけの声」が聞こえてきます。これは、ミニFMを利用した仕掛けとなっています。

 

「おばけ」に向かっておそるおそるラジオを近づける子ども

 

ミニFMの放送機材が内蔵されており、近づくと声が聞こえます

 

本企画は、3回にわたる開催で、のべ約390名のご家族にご参加いただきました。特筆すべき成果は、回を重ねるごとに「自宅からラジオを持参する方」が増えたことです。防災用に購入した手回しラジオや、自治体配布のラジオを持ってくる姿が見られました。「楽しそうだからやってみる」という動機が、結果として各家庭の防災グッズの点検や見直しにつながったのです。

 

2.川崎市「ミニカワサキ」

続いて10月には、川崎市役所で開催された「ミニカワサキ2025」に参加しました。ミニカワサキは、18歳以下の子どもたちが市民となり、自分たちでまちを運営する「こどものまち」。大人は「口出し禁止」が鉄則です。BHNの富保、前田、瀬戸の3名は、このまち唯一のメディアである「ミニFMラジオ局」の技術・運営サポートを行いました 。

 

大人立ち入り禁止のまち、ミニカワサキ

 

ラジオ局の主な役割は、子どもたちが起業した「ネイルサロン」や「クイズ屋」などのお店の宣伝です。FMの電波に乗せて、自分たちのサービスの魅力を発信します。はじめてマイクに向かう子どもたちは緊張の面持ちでしたが、スタッフのサポートを受けながら、自分の言葉で懸命に情報を伝えました。

 

子ども達は「放送局」にやってきて宣伝をします

 

ミニカワサキでは、2日間で約30名の子どもたちがラジオDJを体験しました。自分たちの声が会場内に届くという体験を通じて、子どもたちは「情報を発信することの楽しさ」を肌で感じていました。 ラジオ局は単なる職業体験ブースにとどまらず、イベント全体の情報を流通させ、まちの活性化を促す「ハブ」としての機能を果たしました。

 

中には何度も放送に来る子も

 

3.今後の展望

「おばけラジオ」では、ラジオというアナログな機器が、いまの小学生にもワクワク感を提供できることが証明されました。また、「ミニカワサキ」では、子どもたちの自主性を支えるツールとしての可能性を確認できました。BHNテレコム支援協議会は、今後も技術と人のあいだに立ち、地域社会の課題解決やコミュニティづくりに貢献していきます。

 

 

プロジェクトオフィサー 
瀬戸 義章

 

 

     

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