西日本豪雨被災者支援事業~これまでの被災者支援活動を振り返り、今後の活動を考える~

2023年4月7日(金)10:28

 

 

BHN広島事務所長 福田 卓夫さんからの現地レポートをお届けします。

 

2018年7月に発生した西日本豪雨災害は広島県内に大きな被害をもたらしました。「NPO法人シニアネットひろしま」の会員としてシニアのICT活用支援の活動を行っていた私たちに、BHNテレコム支援協議会本部からお誘いがあり、BHN西日本豪雨被災者支援活動に参加することになりました。

身近で発生した大災害であり、被災された方々のために私たちも何かできないかと思っていたので、積極的に対応することにしました。シニアネットひろしまのメンバーによりBHN広島事務所を、シニアネット福山のメンバーによりBHN福山事務所を開設して、互いに連携し「西日本豪雨被災者支援活動」に取り組んできました。

 

広島県呉市安浦地区の被災状況
(2019年1月17日撮影)

 

更に、2021年からは、「令和3年7月・8月豪雨被災者支援活動」として島根県内にも新しい拠点を設けて活動を行ってきました。

これらの被災者支援活動は2022年度で終了し、2023年度からは新たな活動に移行することになっています。これまでの活動を振り返って次の活動に引き継ぐこと、新たに展開しようと考えていることをまとめてみました。

各種の事前準備作業が完了した2018年10月から、広島県の三原市あやめヶ丘、呉市天応地区、呉市安浦地区、坂町平成ヶ浜中央公園等の仮設住宅団地集会所(又は談話室)に設置したパソコン・プリンター・ドコモおくダケWi-Fi等の機器を活用して、月1回程度定期的にパソコン研修会を行いました。この被災者支援活動の目的は「ICTを活用した地域コミュニティの再生・活性化」です。この目的を実現するためには、設置したパソコン・ネット環境を、被災者住民の方が自発的に活用できる必要があり、そのための支援活動を行ってきました。

私たちは、シニア向けにICT活用を支援してきたこれまでの「シニアネットひろしま」の経験を活かして、住民の方が楽しくパソコンに触れる中で活用法を学んでもらうことを目指してきました。その結果、これまでパソコンを使ったことがなかった呉市天応地区の自治会長が、自治会活動に必要な文書を自ら作成されるようになっています。研修会では、緊急連絡カード、毎月のカレンダー、年賀状作成等暮らしに役立つものを作成できるように支援してきて被災者住民の方から喜ばれました。

 

広島県呉市天応大浜地区 仮設住宅団地談話室(パソコン等研修会)
(2019年6月19日撮影)

 

広島県坂町 平成ヶ浜中央公園仮設住宅団地集会所(パソコン等研修会)
(2019年7月9日撮影)

 

広島県呉市安浦町安登地区 仮設住宅団地談話室(パソコン等研修会)
(2020年1月23日撮影)

 

2021年11月からは、島根県に設けた拠点においても住民へのICT研修会を開始しました。大田市の北三瓶まちづくりセンターでは、防災・減災情報活用及び地域コミュニティの活性化に役立つスマホ・パソコン利用の研修会を繰り返し実施し、自主防災等地域の活動に役立つと地域で高い評価を受けています。この研修会のために作成したテキストは広島等での活動に展開しているほか、「初心者向けパソコン講習テキスト」や「SNSの活用」等はBHNテレコム支援協議会のホームページで公開しています。

なお、2020年以降コロナ禍により現地に自由に行けなくなってからは、感染状況に応じて「ネット活用型支援活動」に切り替え、LINEのグループビデオ通話をよる情報交換、グループトークによる日常的交流等を行い、更にICT活用に関する質問に答える等の対応を行ってきました。この経験は、今後の支援活動の新たな可能性を開くものになったのではないかと考えています。

 

島根県大田市北三瓶まちづくりセンター集会所(パソコン等研修会)
(2023年2月9日撮影)

 

広島市内と呉市天応大浜地区間をネットで結んだ支援活動模様
(2022年1月26日撮影)

 

被災地域の現状は、再建した自宅に戻られたり、公営住宅に入居されたりして、一見落ち着いているように見えます。しかし、お話を伺ってみると、例えば、海に近い場所では高潮や津波が発生したときに、どのように対応したら良いのかという不安があります。また、仮設住宅で一緒に暮らしていたときのような人とのつながりが薄くなり、高齢の方は孤立する心配があるという課題もあります。今後とも私たちとしてできることは対応していきます。

また、島根県大田市北三瓶地区においては、地域の防災・減災の取組の強化、コミュニティビジネス創出等地域活性化、地域からの情報発信強化等の地域の課題解決に向けた取り組みへの支援の要請もあるので、応えていきたいと考えています。

BHN広島事務所では、2023年度から始める新たな活動「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」において、上述した各地域の課題に地域の関係機関と連携して対応する活動の継続、これまでの活動で得た経験・ノウハウのデジタル資料化、今後発生する国内災害に対する支援に活用するICT機器の備蓄・保守管理を行ってまいります。

 

 

BHN広島事務所長 福田 卓夫

 

 

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