震災から5年たった飯舘村の今は

2016年3月11日(金)10:27

 

「飯舘村 29年春までに避難解除」

これは、平成27年4月21日付け地方紙の1面トップ記事の見出しです。26年3月時点では帰還困難区の長泥行政区を除く村内の避難指示解除の目標を28年3月としていたものが1年遅れということになります。

村は帰還準備を加速させるため、まず役場機能を今春にも村内に戻すことを視野に、村の生活環境整備の本格化を進めようとしています。現在では、老朽化した公民館の建て替えや消防分署、村営住宅、国が重点選定した「道の駅・までい館(仮称)」など重要施設の整備が始まっています。また、村内の学校再開に向けた検討委員会は29年4月から幼稚園、統合小学校、中学校を飯舘中学校敷地内で再開するよう答申を行いました。


しかし、帰還に向けて障害になっている被災家屋の解体事業、商業施設や働く場を確保するための対策、「里山」への除染範囲拡大などはこれからという状況です。特に、村の基幹産業である農業再生は重要課題となっており、除染で剥ぎ取られた田畑の栄養回復が急がれています。

それに加えて、国・自治体と住民との間には復興に対する意識にちぐはぐさが感じられ、村民からはいずれの施策も進捗状況が良くないと指摘されております。若者世帯層の帰還に影響が大きい幼稚園、小中学校の村内再開についても、村民アンケートの7割の回答が時期尚早という結果が出ています。国・自治体と住民がお互いに理解し合いながら復興を進めていくことが大事ではないかと思います。

震災後、「見守り隊」として就業している農家の方々は、「汚染された農機具は処分してしまったし、もし農作物が作れるようになっても、風評などが原因で買ってもらえないなら、作る気持ちにもなれない。それに5年も農作業から離れていると、体が鈍(なま)って鍬も振れないよ」と話し、豆もなくなった手のひらを見せてくれました。     

震災から5年、BHNは飯舘村の皆さんに寄り添い、多角的な支援活動を途切れることなく行ってきました。社会福祉協議会主催の「お茶飲み会」でいつもいただく言葉『あなたたちに会うのが楽しみで来てんだぞい』がある限り、これからもずっと続けていきたいものです。

福島事務所 所長 丸山 秋一

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