南阿蘇村震災遺構として残された「旧阿蘇大橋」
2022年7月5日(火)16:28
BHN熊本事務所 尾形 邦彦さんからの現地レポートをお届けします。
私は、2016年4月熊本地震の発災直後より南阿蘇地域を繰り返し訪ね、南阿蘇村の仮設住宅団地で暮らす被災者の皆さまに対し、及びその後建設された災害公営住宅団地に暮らす被災者の皆さまに対して、「ICTを活用した地域コミュニティ再生・活性化支援活動」を実施してきました。
南阿蘇地域は、「阿蘇くじゅう国立公園」の一角にあり、阿蘇五岳(阿蘇山は単体の山ではなく根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳の五つの岳を総称して「あそごがく」と呼ばれ)と外輪山に挟まれた山林と原野の広がる自然豊かな地域です。
昼夜の寒暖差が大きいことや年間降雨量の平均が2,300ミリという恵まれた気候から、米や野菜等良質な農作物が生産されています。また、名水の里として知られ、村の湧水10カ所が南阿蘇村湧水群として「平成の名水100選」に認定されています。阿蘇観光の中心地の一つで阿蘇山上「草千里ケ原」は、観光客に人気のあるスポットです。
2016年4月14日及び4月16日に発生した熊本地震は、熊本県を中心に甚大な人的被害・物的被害をもたらしました。この風光明媚で陽光に包まれた南阿蘇村では、死者31名、半壊以上の家屋被害が1,600棟を超える甚大な被害が発生しました。更に、土砂崩れ、道路寸断、全長約200メートルの旧阿蘇大橋の崩落等により約1,000人が孤立状態となりました。旧阿蘇大橋は南阿蘇村の入り口にあり、もう一つの入り口、俵山トンネルの不通と相まって、災害復旧の大きな足かせとなりました。
私は、この地域を訪問するたびに、防災対策を強化した地域づくりの重要性を感じながら被災者支援活動を継続してきました。
俵山トンネルは2016年12月24日に開通しました。そして、新阿蘇大橋は2021年3月7日開通し、南阿蘇村へのアクセスは格段に改善されました。
崩落した旧阿蘇大橋の橋脚の一部は「南阿蘇村震災遺構」として残されました。私は、熊本地震被災者支援活動の実践を通じて獲得した経験・ノウハウを活かして新しい国内災害に備えながら、そして、防災対策を強化した地域づくりの重要性を正しく伝えながら生きていきたいと考えています。