熊本地震被災者支援事業~これまでの被災者支援活動を振り返り、今後の活動を考える~

2023年5月9日(火)16:01

 

 

BHN熊本事務所長 色見 高司さんからの現地レポートをお届けします。

2016年4月に発生した熊本地震は規模が大きく、被害は熊本県内の広範囲に広がっていました。熊本地震の特徴は2回の大きな地震(前震、本震)があったことです。

前震 2016年4月14日(木) 21:26  マグニチュード 6.5

本震 2016年4月16日(土) 01:25  マグニチュード 7.3

私はこの激しい揺れを熊本市内にある自宅マンション内で体験しました。室内に居ても、立つことも出来ず、座ることも出来ず、激しい揺れになされるがままでした。その日は避難所に指定されている熊本県立熊本商業高校(熊本市中央区神水1丁目)に避難しました。板張りの体育館に横になるだけで、寝られなかった思い出があります。日頃から非常持出品等を準備しておくことの大切さを思い知らせれ、大いに反省をしました。

交通インフラ設備の被害も甚大でした。山肌斜面の大規模崩落、阿蘇大橋崩落、国道57号不通(九州の中部を東西に横断し、県庁所在地である大分市、熊本市、長崎市を連絡する国道)等複数の道路被害がありました。JR豊肥線と南阿蘇鉄道は全面通行不能になりました。南阿蘇鉄道は、私自身が高校時代熊本市の高校に通う鉄道で、この日までこのような被災を受けることはありませんでした。更に、九州新幹線も脱線して一時不通になりました。

崩落した阿蘇大橋付近の説明をします。
・外輪山の山肌の斜面の山肌に沿ってJR豊肥線が通って大分県に抜けます。
・国道57号も山肌に沿って大分県に抜けています。
・阿蘇大橋の崩落したのは黒川の流れの所です。
・地震発生時、国道57号を自家用車で走っていた22歳の大学生が阿蘇大橋の崩落と共に黒川に落ちました。

2016年5月14日、BHNテレコム支援協議会本部(以下、BHN)から「ICTを活用した本格的な熊本地震被災者支援事業への協力要請」が届きました。BHNの「ICTを活用した本格的な熊本地震被災者支援事業」は、熊本市等6カ所の避難所向けの支援活動から開始し、続けて熊本市等7市町村に開設された47カ所の仮設住宅団地集会所・談話室を対象に準備を進めることになりました。

熊本シニアネットとNTT九州電電同友会熊本支部を母体として、最初のコアメンバー8人全員をシニア世代で構成してBHN熊本事務所をスタートすることができました。

避難所生活をしてきた被災者にとって、心が落ち着けるのは仮設住宅団地生活からです。BHN熊本事務所では仮設住宅団地建設途中の段階から当該役場担当課や施工業者と打ち合わせをして、被災者支援活動の準備作業を進めました。住民の自治会とも早めの打ち合わせをして、支援対象と抽出した仮設住宅団地集会所・談話室へ「BHNパソコンコーナー(パソコン・プリンター・ドコモおくダケWi-Fiアクセスポイント等)」を開設しました。BHNパソコンコーナーで必要なテーブルの準備もBHN熊本事務所側で実施しました。

 

BHN熊本事務所、最初のコアメンバー8人によるミーティング模様 (2017年6月29日撮影)

 

上記写真は、奥から:有馬 修二氏(本部 理事) 
廣井 均氏    吉田 和子氏
徳留 和憲氏    橋本 求名生氏
宮本 金生氏   尾形 邦彦氏
色見 高司    加藤 公彦氏

 

BHN熊本事務所は、当初コアメンバー8人でスタートしましたが、間もなく遠隔地を含むエリアマネージャー制度を取り入れ、体制を強化して長期間に渡る広域災害被災者支援体制を整えました。

熊本市、益城町、南阿蘇村、西原村、甲佐町、御船町、御船町の7市町村毎にBHN側に正副エリアマネージャーを配置し、市町村の行政部門、社会福祉協議会、地域支え合いセンター、仮設住宅団地自治会との対応を一元化し、できるだけ同じメンバーが担当する市町村を繰り返し訪問する仕組みを維持しました。

仮設住宅団地生活の長い人は、まる7年間、仮設住宅団地住まいの人も居ました。団地で生活する多くの被災者の皆さまから、「遠隔地を含むエリアマネージャー制度」を活用した被災者支援活動は大変好評でした。

熊本地震被災地では、「より良い復興」を目指して、各種の取り組みが実施されました。国道57号線の2ルート化、県道熊本高森線4車線化の拡幅工事等です。

2016年熊本地震による被災状況は甚大でした。阿蘇への主要幹線道路・鉄道が寸断されました。阿蘇の山肌を縫って走るミルクロード等での迂回や代替バスの利用を余儀なくされる状況でしたが、2020年開通した国道57号線「現道ルート」と「北側復旧ルート(二重峠トンネルルート)」の2ルートにより、所要時間も大幅に改善されました。

「より良い復興」の二つ目の事例として、県道熊本高森線では、2016年熊本地震をきっかけに防災機能や利便性を高めるため、熊本市東区から益城町寺迫までのおよそ3.8キロの区間で4車線化する拡幅工事が進められています。熊本県は令和8年3月末に事業完了を目指しています。

県道4車線化の拡幅工事のうち一部の区間の工事が完成し、2023年3月28日から供用が始まりました。供用が始まったのは、益城町の中心部を通る県道熊本高森線のうち、交通量が多く優先して工事が行われた熊本市東区桜木から益城町広崎までのおよそ800メートルの区間です。

2016年熊本地震の震源地となった、益城町では多くの公共施設が被害を受けました。なかでも、益城町役場庁舎は大きな被害を受け、再建を進めてきました。

役場新庁舎が令和5年3月24日に完成しました。供用開始は5月からです。初めて、新庁舎を見たとき、その美しさ、規模の大きさにビックリしました。この新庁舎は、熊本地震からの経験と教訓を踏まえ災害に強く安全安心の拠点となる施設として、地盤と建物を切り離すことで大地震の際も揺れを建物に伝わりにくくする「免震構造」が採用されているそうです。

また、災害時の電気や上下水道等のインフラ供給停止の際も、3日間の機能維持が可能な設備を整え、災害対策本部としての機能強化を図られています。

 

再建工事が完了した益城町新役場庁舎
(2023年3月9日撮影)

 

BHN熊本事務所では、熊本地震被災者支援事業を通じて獲得した経験・ノウハウを活かして、新しい国内災害、南海トラフ巨大地震及び首都直下地震等の発生に備える広域災害後方支援機能について、引き続き準備を進めたいと考えています。

 

BHN熊本事務所長 色見 高司

 

 

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