ミャンマー南部ラプッタ郡における防災支援および保健衛生意識向上事業始まる
2024年11月26日(火)14:37
エーヤワディ地方域ラプッタ郡の学校及び村落における防災支援及び保健衛生意識向上事業
本事業は、2023年度外務省日本NGO連携無償資金協力(注1)の採択を受け、当初ミャンマー西南部ラカイン州タンドゥエ郡で開始しました。2024年2月20日~2025年2月19日の事業期間で当該タンドゥエ郡の中学校等に学習支援および村落伝達支援システム(Learning and Communication Assist system, 以下「LCAシステム」)とハザードマップを設置し、それらを活用して生徒および住民の防災能力の向上および保健衛生意識向上のための活動を行う事業です。
事業開始にあたり、ミャンマーにおける本事業の関係省庁である社会福祉・救済・復興省、保健省、教育省、ラカイン州政府に対し、事業概要について文書で説明し、引き続きラカイン州およびタンドウェ郡の行政機関幹部に対し事業実施許可に向けてオンライン会議を実施しました。
しかし、当時ラカイン州北部に限定されていた国軍と少数民族武装勢力との衝突が同州南部の事業予定地タンドウェ郡エリアまで拡大し、当地での活動が困難な状況となりました。
この治安状況の変化を踏まえ、事業地の変更も視野に入れて外務省の関係部署と相談をいたしました。
その結果、9月26日付けで事業地をエーヤワディ地方域ラプッタ郡に変更し、これに伴う事業期間も2024年2月20日~2025年5月19日として承認いただきました。
変更後の事業地であるラプッタ郡は、ベンガル湾に面したエーヤワディ地方域のデルタ地帯の南西部に位置し(図1)、村落の多くは大小河川の狭間にあります。(図2・図3)
事業地(エーヤワディ地方域ラプッタ郡)の位置 (図1)
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このエーヤワディ地方域は、標高が10m未満の土地が多く、ミャンマーでもサイクロンや洪水被害が多く発生する地域です。中でも当該事業地であるラプッタ郡は自然災害に対し極めて脆弱な地域のひとつで、商用電力などの基本的なインフラの無い村落が多く、サイクロン襲来等の緊急時に、地域住民が安全確保に必要な情報を入手することが非常に困難な状況です。
2023年5月に大型サイクロン・モカがラカイン州を襲った際に、令和2年度プロジェクトでLCAシステムを設置したラカイン州最南端グアでは、これにより当該エリアの学校・村落ではサイクロン襲来の情報をいち早く伝えることができ、住民たちは自主的に避難することができたと聞いています。
一方医療サービスの面では家計収入が低く保健衛生レベルが低いことから平均寿命が短く幼児死亡率・5歳未満児死亡率は高くなっています。
事業概要は以下の通りです。
1)LCAシステムの設置導入:事業地の中学校等10校にLCAシステムの設置および説明会開催、そのシステムのモニタリングと活用指導。
2)ハザードマップの作成・設置、および説明会の実施:事業地の中学校等10校にハザードマップの作成設置・説明会の開催。
3)DDM(注2)ラプッタ郡支部における防災センターの整備:防災センターにLCAシステムの設置、研修設備の供与。
4)防災ワークショップの実施: 教師および地域住民向け防災ワークショップの開催。
5)保健衛生意識の向上施策の実施:キックオフ会議、健康状況等のベースライン調査、報告書の作成、保健衛生授業、保健衛生研修会、保健衛生メッセージ集の作成。
6)活動報告会の開催:行政機関の幹部、防災関係者、保健衛生部門関係者等を招き、活動報告会を開催
なお、LCAシステムは、スピーカにより情報を伝達し、視聴覚機器により教育研修を行うためのシステムで、システム構成は(図4)に、LCAシステムとハザードマップの利用イメージは(図5)に示す通りです。
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また、本事業ではDDMラプッタ支部の防災センタービル(図6)にLCAシステム、PC、プロジェクター、スクリーン等の整備を行い、数十人規模の研修が行えるようにします。
この防災センターでは各村落の代表者、学校の教職員等を招き、防災研修を行い、生徒や住民が最新の教材で防災や保健衛生に関する知識を得ることができるようになり、災害被害者や罹病者の大幅な減少が期待できます。
(注1)日本NGO連携無償資金協力は、日本の国際協力NGOが開発途上国・地域で実施する経済社会開発事業に外務省より必要な資金が供与される制度。
(注2) DDM:Department of Disaster Management(災害管理局)は、連邦政府の社会福祉・救済・復興省)に属する。
参与 渡辺 栄一