ラカイン州タンドゥエ郡の学校および村落における防災支援および保健衛生意識向上事業
2024年4月15日(月)15:57
ラカイン州タンドゥエ郡における防災支援および保健衛生意識向上事業始まる
本事業は、2023年度外務省日本NGO連携無償資金協力(注)の採択を受け、2024年2月ミャンマーのラカイン州タンドゥエ郡において開始しました。事業期間は2024年2月20日~2025年2月19日で、ラカイン州タンドゥエ郡の中学校等に学習支援および村落伝達支援システム(Learning and Communication Assist system, LCAシステム)とハザードマップを設置し、それを利用して生徒および住民の防災能力の向上および保健衛生意識向上のための活動を行う事業です。
(注)日本NGO連携無償資金協力は、日本の国際協力NGOが開発途上国・地域で実施する経済社会開発事業に外務省より必要な資金が供与される制度。
事業開始に当たり、先ずは本事業の関係省庁であるミャンマー連邦政府(社会福祉・救済・復興省、保健省、教育省、ラカイン州政府)に対し下記の事業概要、およびスケジュール等について説明し、事業開始許可を待っているところです(事業地の現状について、文末の「追記」参照)。
事業概要は以下の通りです。
1) LCAシステムの設置導入:事業地の中学校等15校にLCAシステムの設置および説明会開催、そのシステムのモニタリングと活用指導
2) ハザードマップの作成・設置、および説明会の実施:事業地の中学校等15校にハザードマップの作成設置・説明会の開催
3) 災害管理局(DDM)タンドゥエ支部における防災センターの整備:防災センターにLCAシステムの設置、研修設備の供与
4) 防災ワークショップの実施:教師および地域住民向け防災ワークショップの開催
5) 保健衛生意識の向上施策の実施:キックオフ会議、健康状況等のベースライン調査、報告書の作成、保健衛生授業、保健衛生研修会、保健衛生メッセージ集の作成
6) 活動報告会の開催:行政機関の幹部、防災関係者、保健衛生部門関係者等を招き、活動報告会を開催
なお、LCAシステムは、スピーカにより情報を伝達し、視聴覚機器により教育研修を行うためのシステムで、システム構成は図1に、LCAシステムとハザードマップの利用イメージは図2に示す通りです。
◆図1、図2、図3は画像をクリックするとPDFが開きます◆
事業地のタンドゥエ郡は、ミャンマーの西端ラカイン州の南部に位置し(図3参照)、隣接する南部デルタ地帯のエーヤワディ地域と並んで、サイクロンや洪水による災害が多く発生する地域です。2023年5月に大型のサイクロン・モカがラカイン州を襲いましたが、先行プロジェクトによりラカイン州最南端グア郡で学校や村落にLCAシステムを設置しており、学校や村落ではサイクロンの襲来時に防災情報を伝えることができ、住民たちは自主的に避難することができたと聞いています。
また、本事業ではDDMタンドゥエ支部(注)の防災センター(写真1)にLCAシステム、PC、プロジェクター、スクリーン等の整備を行い、数十人規模の研修が行えるようにします。この防災センターでは各村落の代表者、学校の教職員等を招き、防災研修を行い、生徒や住民が最新の教材で防災や保健衛生に関する知識を得ることができるようになり、災害被害者や罹病者の大幅な減少が期待できます。
「追記」ラカイン州の治安状況について
事業地タンドゥエ郡(写真2、写真3)は平穏で安全な地域ですが、国軍と少数民族武装勢力「アラカン軍」(AA)の衝突がラカイン州北部で継続し、ラカイン州の国境は現在封鎖されており、陸路での事業地行きは関係機関の許可が必要です。現在のところヤンゴンから州都のシトウエイ、または事業地のタンドゥエ郡行きは空路のみの状況が継続しています。事業の本格的な開始に向け先ずは関係省庁であるミャンマー連邦政府の事業開始許可を待っているところです。
尚、今後も本活動の意義・重要性をひろく周知し、保健衛生改善の徹底を図るために、行政機関の幹部および保健衛生部門関係者を招いての活動報告会を開催予定です。
参与 渡辺 栄一