インタビュー:相澤 紘史氏

ミャンマー・カレン州・モン州東部における紛争被害者を対象とした住居電化事業

「住民が自立的に設備を運用・保守管理し、
 電気を使い続けるための基盤ができました。」

Q:最初に今までの経歴を教えてください

企業在職中の30代のころYoung Men’s Service Clubsという世界組織団体に参加していました。おかげで南米大陸と南極以外の大陸での会議開催国は、全て周りました。
オーストラリアは40年前に行ったときは野性的な印象だったけれど、15年ぐらい前に行った時には、街が綺麗になっていて洗練された印象を受けたんです。1ジェネレーション経つとこうも変わるのかと思いましたね。ワインも美味くなってるし。各住宅にイングリッシュガーデン風な庭のある、まさにニュージーランドの「花の街」とも言えるクライストチャーチの様に花々が飾られ綺麗でした。
日本の企業の支社長という方がね、Young Men’s Service Clubsのメンバーで、食事にと招待してくれたんですよ。その時の彼の年収は、日本と比べても高い方じゃなかったんだけど、綺麗なお家の下に海が有って、ヨットを浮かべていたんです。素晴らしい一軒家に住み、素晴らしいヨットで週末は家族と楽しんだり。そういう豊かな時代だったんですよ。
ウルグアイもそうでしたね。ウルグアイは、「南米の天国」と言われるくらい綺麗で、国は今、日本的に言えば貧しいんだけれど広い庭に花が沢山有り、20年ぐらい前だけど1,000万円で豪邸が買えると言われていて。そこで「買うか!」って言ったんだけど、行くのにお金がかかる、ってなってね(笑)。

Q:相澤さんが、一度は観た方が良いと思える光景(景色)は何ですか?

南米アマゾンの源流です。ワニを突いたり、ピラニアを突いたりをしましたね。大湿原が有って。ピラニアも食べたし、ワニも食べたし。カピバラも食べられるのですが、流石にかわいそうだと言って、食べるのは止めました。でも、カピバラの手袋を持っていますよ。カピバラなんかそこらにゴロゴロ居るの。要するにね、アマゾン川とラプラタ川にの源流地帯で自然豊かなんです。

Q:BHNに入ったきっかけを教えてください。

最初はHPの英語版を作ってくれと頼まれて、それならお安い御用でと思い1~2回やりました。でもそれどころじゃなくなって、たちまち、ハイチのプロジェクトマネージャ―を任されることになったんです。スキルもノウハウもない中、皆手探りで対応しましたね。
2010年ハイチ、その後すぐに2011年東日本大震災でしょ。で、それをやってたら、バングラディシュのプロジェクトで「やってくれる人が居ないからやって欲しい。プロジェクトマネージャー(以下、プロマネ)は居る」って言うのでやっていたら、国内プロマネ。今はミャンマーのプロマネなわけですよ。

Q:今「ミャンマーの紛争被害者の生活環境向上のための支援事業」をされていますが、その活動の際、どの様なことが難しいと思われますか?

ソーラーパネルの角度を確認し、データを入力

外務省と折衝する時に色々と現地の状況はどうだからこうやります。 という説明を求められるでしょ?だけど、申請書を作る時に現場に入れない。要するに、「これをやることに成りました。」「じゃ~、この事業は1億円で認めます。」って言って初めて先方に対して、「日本政府から1億貰えたからご要望の工事を始めますよ。」って言って、「じゃ~場所を案内します」ってなるんです。で、行ってみないと正確な場所は分からないんですよ。地図を見せてこの辺だって言えば「あ~、川からこー行ってココね。」ってポイントするんですけど、GPSで調べてもね、みんな場所が違うんですよね。もっと難しい話をすると、例えば放送局とかの設置作業は、地図GoogleEarth(グーグルアース)を使ったりして場所を特定するわけなんだけど、地図見ただけじゃやっぱり出来ないところが有るので、現地に行って確認しないと分からないところが有るんですね。今は何とか推測で出来るんですけど。それだからね。最終的にプロジェクトが始まらないと事業現場が見られないという事が一番難しいですね。

Q:現地は協力的ですか?


特に武装勢力エリアに初めて行ったときは大変なんですよ。特に奥地に対してはね。だけど、そういうことを続けているとどんどん信頼されて。「顔パス」っていう言葉通りでね。
結局ね。植民地時代からの流れが有って、植民地時代以来、今の武装勢力エリアってのはずっと政府は入っていない地域でしょ。だからね、外国人に対しても政府に対しても非常に警戒心が強いんです。
基本的に。武装勢力エリアって日本人以外ほとんど入ってないです。わずかにごく一部だけが友好的な話が有って努力して、ほんのポツンポツンとしか欧米人はあまり入れないんですよ。白人ということでその時代を知っている人はほんの僅かだけど、植民地時代の事が語り継がれているんでしょうね。

Q:国の行っている支援としては特別なのですか?

今行ってる事業での日本政府のお金というのは、普通のODAっていうか政府間援助では考えられないやり方なわけなんです。普通、政府と政府が約束するときは発電所一つ何十億円、工場を作る何十億円、水道整備をします何十億円っていう風に決めるわけです。ところが今回は、「内戦を少しでも早く終結させる為には何が大事か?」というと、武装勢力の人たちに『内戦を止めると、今よりずっと良いことが起きますよ。』という事を示すこと。それは外務省への申請書にも書いているのですけどね、【和平の果実】という言葉を使っています。それが得られるのだと。
そうすると、まだ半分の組織が停戦してないんですけど、その停戦してない人たちに、停戦した人たちの所では、停戦したことで凄く生活が良くなったということを見せる。それによって、「あ~。じゃ~やっぱり、停戦した方が良いんだ。」と思ってもらう。
武装勢力側だっていつまでも道路も舗装されず、発電所もない、電気もない。そんな生活を自分たちの配下の人たちに強いることは出来ないでしょ。他の地域では、携帯電話でどこでも電話しているのに。彼らの内部でも不満がたまってしまって、内部を押さえられなくなってしまっている。そういうことで休戦協定締結となる。

Q:世界的に見ても珍しい形ですね?

あまり無いです。例えば、ビルゲイツが奥さんと「ビル&メリンダゲイツ財団」って作ったところ、ロータリークラブがポリオを世界から根絶したいのでその為に200億円だったかな、必要で財団に寄付してくださいってお願いしたら、「分かった。その代わり自分たちで100億円出しなさい。そして具体的にこれをします。その為にロータリーで100億円出します。と明示しなさい。そうすれば財団も100億円出します。」と言ったんです。使用目的ありき。皆これこれやりますって明示する。それが普通なんですよ。

Q:BHNの場合は、その結果が目に見えているという事が、そのお金の使用目的なわけなのですね?

そうなんです。だからこれはね。日本政府としてもすごく怖い。当初約束して失敗したら何を言われるかわからない。皆が鵜の目、鷹の目で見てるわけですから。今は日本財団からの支援事業としてミャンマー最大の少数民族で、カチン州の一番強硬派なんだけど、そことの和平交渉に向けて活動をしているんですよ。

Q:最後に相澤さんへの個人的な質問をさせてください。相澤さんは「美濃焼作り」「お茶」「旅行」「山歩き」「スキー」と、非常に多趣味でいらっしゃいますが、今後こんなことをしてみたいとかいう事は何かありますか?

相澤さん作陶の抹茶わん

美濃焼の作陶は時間がかかるんです。自宅で全部揃えれば簡単なんですが、窯や道具を自分で揃えるとなると、はっきり言って良い物がなかなか出来ないんですよね。窯も道具も先生の所(美濃)へ行って借りるんですよ。連休の時は、ちゃんと車を運転して美濃(岐阜県)まで往復していたんですよね。
美濃焼っていうのはお茶に使う道具をたくさん作るので、そういう意味ではね、お茶の心も分からないといけない。良い物が作れないんですよ。

Q:美濃焼から入って茶道へとご趣味が広がったんですね。

もともとは、中国の青磁とか白磁だったのね。大昔、学生の時に台湾から日本に来た中国料理屋さんから子どもに勉強を教えてくださいって言われて、短期間勉強を教えたことが有るんです。そしたら「是非、台湾に来てください。友達に紹介しますから」っていうんで、台湾に行って友達に紹介されたり、故宮博物館を案内されたりしたんです。数多くある凄い物を見てそこで、青磁とかも見て惚れ込んでね。
そのうちに焼き物に興味が湧き、美濃に行くことが有ったからそこで美濃焼の先生と仲良くなって。自分の茶器を作っていたのですが、茶器を作るには茶道を知らなければと、茶道も習いました。その知識を活かしてまた美濃焼の作陶をあらためて再開したいですね。美濃まで行って教わっていたので、その時間が作れたらと思っています。

相澤さん有難うございました。とても面白い体験談から支援事業の具体的にご苦労されているお話まで、いろいろお伺いさせていただきました。
今後のご活躍にも注目していきたいと思います。

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