国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業~広島事務所の新しい取り組み、3つの活動拠点において一体性を持った取り組み~

2023年6月27日(火)10:55

 

 

BHN広島事務所(所長:福田 卓夫氏)は、2018年の事務所開設以来、2018年7月に発災した西日本豪雨被災地(広島県)、2021年7月・8月に発災した令和3年7月・8月豪雨被災地(島根県、広島県)を対象に、「ICTを活用した地域コミュニティ再生・活性化支援活動」を実施してきました。

新型コロナウイルス感染症の蔓延時期と重なった2020~2022年度には、従来のICT支援ツールであるパソコン・プリンター・ドコモおくダケWi—Fi回線に、新しいICT支援ツールとして、NET会議・クラウド・SNS・タブレット・スマホ・ポケットCO2センサー・ドコモhome5G/SH-52Wi-Fiルータ等を加えて被災者支援活動を継続しました。新型コロナウイルス感染症が落ち着いている時期には被災地を直接訪問する「ふれあい型被災者支援活動」、同感染症の蔓延時期には「ネット活用型被災者支援活動」を組み合わせて実施しました。【西日本豪雨被災者支援事業】

BHN広島事務所が実施している被災者支援活動の最大の特徴は、島根県及び広島県の2つの県にまたがって活動を実施していることです。島根県大田市北三瓶センターの活動には技術開発センター機能を持ち、広島県安芸郡府中町府中南センターの活動には、業務開発センター機能の役割を持たせて取り組みました。島根県及び広島県の2県間を結び新しい被災者支援活動法を開発・活用する手法は、今後高い確率で発生が予知されている南海トラフ巨大地震・首都直下地震等、複数県を跨る広域災害に備えるための「広域災害後方支援ICT機能整備の基本検討業務」に役立ちました。

「西日本豪雨被災地の広島県呉市安浦地区・天応大浜地区、及び令和3年7月・8月豪雨被災地の島根県大田市北三瓶地区」の3つの活動拠点より、ICTを活用した支援活動の継続要請を受けています。BHN広島事務所では、国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業において、支援活動の継続要請に積極的に応えつつ、併せて、①広島事務所の事業継続及び近接地域で発生する新しい国内災害へ即応体制の維持、②豪雨災害被災者支援事業で獲得した各種経験・ノウハウのデジタル資料化、③南海トラフ巨大地震及び首都直下地震等に備える「既得通信機材を利活用する広域災害後方支援ICT機能整備」等を進めていきます。

BHN広島事務所では、3つの活動拠点において一体性を持った取り組みを進めていきます。

 

今後の活動について(3拠点で一体性を持った取り組み)
(BHN広島事務所 2023年5月20日作成)

◆画像をクリックするとPDFが開きます◆

 

2023年5月~6月、島根県大田市北三瓶地区及び広島県呉市安浦地区・天応大浜地区で実施した被災者支援活動をまとめて報告します。なお、ICT研修会の実施に際しては、引き続き、CO2センサーで密にならないように監視しました。マスク着用、手指消毒等の基本的な感染対策をして行いました。

2023年5月11日、島根県大田市北三瓶センター、住民9人+まちづくりセンター職員1人、講師はBHN広島事務所の福田 卓夫氏が担当しました。この日の研修テーマは、「スマホ基本機能(LINE活用)復習、AI活用研修、デジタル終活」でした。

 

●スマホ基本機能(LINE活用)復習

LINE通話機能の使い方を研修しました。一対一での音声通話・ビデオ通話の発信と応答、グループ通話の始め方・参加方法・退出のしかたを徹底練習しました。次に、梅雨時期を前に緊急時のLINE活用として、災害発生時の安否情報確認や迅速かつ確実な情報伝達の方法を復習しました。

 

●AI活用研修

今話題となっているAIの「ChatGPT」と、この日から日本語版サービスが開始されたGoogleの「Bard」の両方を体験しました。ChatGPTは最初の利用者登録の手順が複雑で、利用を断念した人もありましたが、Bardの方はわかりやすくて全員が利用できるようになりました。

参加者は、話題のAIがどのようなものか体験し、返ってくる情報で利用できるものもあると実感できたようで、とても興味を持たれた様子でした。研修が終わった後もLINEグループで話題が続いていました。

 

●デジタル終活

BHN広島事務所の母体組織である「シニアネットひろしま(理事長 福田 卓夫氏)」のオンライン講演会「デジタル終活を考える~情報の管理とデジタル活用~」のポイントを説明しました。利用しているオンラインサービスのID・パスワード等の情報を適切に管理するために、まずは情報を一覧表に整理すること、情報はデジタル化して保存することを勧めました。今後ともフォローしていきます。

 

研修テーマ「スマホ基本機能、AI活用、デジタル終活」
(2023年5月11日撮影)

 

教えあいながら楽しく、AIで盛り上がりました
(2023年5月11日撮影)

 

2023年6月1日、島根県大田市北三瓶センター、住民9人+まちづくりセンター職員2人、講師はBHN広島事務所の福田 卓夫氏が担当しました。この日の研修テーマは、「防災対応、キャシュレス決裁の利用、島根県の異常通報アプリ~パトレポしまね~」でした。

 

●防災対応

はじめに、防災「マイ・タイムライン」の作成について説明し、災害時に家族でどう行動するかをあらかじめ考えておくことを勧めました。浜田市がハザードマップに添付し市民に配布している様式を配布し、家族と相談して作成してもらうようにしました。

次に、マイ・タイムラインを作成する際に、自宅付近でどのような災害の危険があるのを把握するため、国土地理院の「重ねるハザードマップ」の使い方を研修しました。この地域では、土砂災害の危険個所が多いので、急傾斜崩壊、土石流、地すべりのそれぞれについて表示して確認をしました。更に、市のハザードマップには反映していない、土石流危険渓流や急傾斜崩壊危険個所等も確認しました。

続いて、大雨が続くようなときには危険度がどれくらい高まっているかを、気象庁の「キキクル」と「NHKニュース・防災」アプリで確認するよう、それらの使い方を復習しました。この研修は以前にもやっているので、皆さん知ってはいますが、いざというときに使えないといけないので、繰り返し復習します。

更に、位置情報をLINEで送信する練習も行い、緊急時の情報伝達を確実にできるように研修しました。

 

●キャッシュレス決済の利用

キャッシュレス決済の普及が進んでいる中で、参加者の中には、“機能はあるが使い方がわからない”とか“これからやってみたい”という人があるので、使い方を一から研修しました。キャッシュレス決済の種類と特徴を説明し、よく利用されているサービスについて始め方と利用方法を具体的に説明しました。皆さんが安心して利用できるようにサポートします。

 

●島根県の異常通報アプリ「パトレポしまね」の利用

島根県は、県が管理する道路や河川に異常が発生した場合に、発見者が県に通報するアプリ「パトレポしまね」を提供しています。これは災害時にも役立つ通報手段です。まちづくりセンター職員が、「地域内で県道に落石があったときに、このアプリで通報したら、すぐに対応してもらえた。」という事例を紹介し、このアプリの利用を勧めたので、全員がアプリをインストールし利用方法を確認しました。

そのほか、講師から、最近発生しているマイナンバーカードの問題についてデジタル庁の発表資料を元に解説しました。更に、AIの活用について話しました。今後とも住民がICTを有効に活用できるようサポートしていきます。

 

研修テーマ「防災対応、キャシュレス決裁の利用、
島根県の異常通報アプリ~パトレポしまね~」
(2023年6月1日撮影)

 

まちづくりセンター職員も加わって、個別指導
(2023年6月1日撮影)

 

2023年6月15日、広島県呉市安浦老人福祉会館、住民9人、講師はBHN広島事務所の廣中 香氏が担当しました。この日の研修テーマは、「防災情報取得方法」でした。

 

●西日本豪雨災害を振り返って

はじめに、西日本豪雨災害から5年になることをみんなで回想しました。辛い経験ではあったけれど、今こうしてみんなで集えることは有難いとも話されました。災害があったから、こうして知り合えた、また災害の辛い体験を共有できるし、今後また災害が起こってもみんなで声を掛け合うことができるね。等、前向きな話ができました。

 

●呉市版防災ハザードマップの確認

5年前と大きく異なることは、スマホを持っている方々が増えたことです。情報を得るために今では必要なスマホですが、使い方がわからなくては宝の持ち腐れという意見もありました。そこで、今回は「呉市の市政だより」を参考にして、自分が住んでいる地域の呉市版防災ハザードマップを確認しました。

このハザードマップを確認するためにはQRコードを読み込むことが必要になります。初めての方には「QRコードの読み取り方」を参考に読み取りを行いました。

ハザードマップは自宅にはあるはずだけど、じっくり見たことが無い方もおられました。被災後に住んでいる場所は安全だと思っていたけれど、そうでもないことがわかり避難のタイミングも大切だと話題になりました。

 

●防災情報の入手と活用

続いて、BHN広島事務所で作成したテキスト「NHKニュース・防災アプリの使い方」を使って全員で研修しました。まだアプリをダウンロードしていない方には学習したQRコードの読み取りから行いました。雨雲のデータがあれば、毎日の洗濯干しにも活用できるねと主婦らしい意見もありました。日頃から天候に関する情報を得て、スマホに慣れることが必要だと実感しました。少しずつではありますが、スマホに慣れ、いざという時に情報収集で使えるよう、これからも防災研修会を続けます。

 

●情報交換とお茶会

ICT活用研修会後には、近況報告も兼ねた、いつもの短い茶話会を開催しました。淡交会様の善意でお菓子とお抹茶もありました。古い着物をリメイクする部屋着の紹介等もあり、一段と賑やかな情報交換とお茶会になりました。

 

呉市の市政だより「災害への備え」、「防災情報の取得方法」
(2023年6月15日撮影)

 

 

「Googleレンズ」を使用して、呉市の市政だよりQRコードの読み取り練習
(2023年6月15日撮影)

 

2023年6月21日、広島県呉市天応大浜アパート集会所、住民5人、講師はBHN広島事務所の沖野 啓子氏、岡崎 幸子氏、杉原 瑞枝氏、寺岡 和子氏、廣中 香氏が担当しました。この日の研修テーマは、「防災情報活用、個別ICT活用相談」でした。

 

●防災情報活用

梅雨の大雨が心配される時期となっているので、防災・減災のための情報を入手し適切に行動できるようにするための研修を行いました。

今回は、気象庁の「キキクル」(危険度分布)の特徴・機能と利用方法を研修しました。キキクルの概要について、先日地元紙に掲載されていた気象予報士が書かれた記事を見てもらい確認しました。「五段階の危険度の色分けも何となく見ていたものが、しっかり覚えられた」との声も聞かれました。

次に、パソコン画面をテレビに映して、キキクルの機能と操作方法を説明しながら、それぞれのスマホで利用してもらいました。キキクルで検索すると気象庁とは違うページも出てくるので間違えて開かないこと、現在地を表示するにはスマホの位置情報をONにする必要があること等を確認し進めました。

土砂災害や浸水等、災害の種類に応じて画面を切り替え一緒に見て行きました。「川の名前等もしっかり表示されて分かりやすい」という感想や、「この集会所は海に近いので高潮等に注意が必要だ」というような意見が出ました。

5年前には大きな災害を経験しているので、これからの梅雨末期の大雨の季節に備えて、危険を感じたらすぐに開いて確認するようにしたいという声が皆さんから聞かれました。広島事務所で作成したキキクルのマニュアルを配布し復習してもらうようにしました。

 

●個別ICT活用相談

自治会長さんがパソコンをより使いやすくしたいということで、デスクトップ画面の整理を支援しました。地区世話役さんが、地区回覧板に付けて回す一覧表を作成されるのを支援しました。皆さん、7月のマイカレンダーを作成し持ち帰られました。

 

自身のスマホで「キキクル機能と操作方法確認」
(2023年6月21日撮影)

 

土砂災害や浸水等災害の種類に応じて画面を切り替えて解説
(2023年6月21日撮影)

 

BHN広島事務所が担当している3カ所の活動拠点では、2023年5月~6月の共通テーマとして、「スマホによる防災情報の取得法と活用法」に取り組みました。

 

 

国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業
理事(プロジェクトマネジャー)
有馬 修二

 

――――――――――――――――――――――――――――
*BHN 自主事業「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」、事業期間:「2019年4月1日~2027年3月31日(以後、継続していく予定)」は、西日本電信電話株式会社(CLUB NTT-West)、NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)、株式会社NTTドコモ(d POINT CLUB)のポイント寄附にてご支援いただいて、事業を継続しています。
――――――――――――――――――――――――――――

 
 

     

寄付をする