国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業

2011年3月11日東日本大震災の発災以来、日本国内各地において次々に大規模な自然災害が発生してきました。BHNテレコム支援協議会では、これらに対しその都度、国内災害被災者支援事業を立ち上げて対処してきましたが、2019年4月1日より、「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」を開始し、予め備えながら対処することとしました。

事業名国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業
(1) 現地ICT支援活動拠点機能維持事業(BHN宮城、熊本、広島事務所等の継続)
(2) 現在実施中の各被災者支援事業から獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業
(3) 新たに発生する国内災害及び発生が予知されている南海トラフ巨大地震及び首都直下地震等に対し備えるためのICT支援活動拠点ネットワーク事業、更に「事前復興」の視点からデジタル田園都市国家構想等の推進に役立つシニアデジタルネットBHNへの取り組み準備事業
受益者対象地域の被災者 約8,000人~50,000人
対象地域2011年3.11東日本大震災宮城被災者支援事業 対象地域
(宮城県石巻市、東松島市、南三陸町、女川町、登米市を主対象とする宮城県域全体)
2016年熊本地震被災者支援事業 対象地域
(熊本県熊本市、益城町、嘉島町、甲佐町、御船町、西原村、南阿蘇村等7市町村を主対象とする熊本県域全体)
2017年九州北部豪雨被災者支援事業 対象地域
(福岡県朝倉市を主対象とする福岡県域全体)
2018年西日本豪雨被災者支援事業 対象地域
(広島県坂町・呉市・三原市を主体対象とする広島県域全体)

南海トラフ巨大地震(南海トラフ巨大地震 大規模被災想定対象県域全体)
首都直下地震(首都直下地震 大規模被災想定対象県域全体)

2019年4月以降発災した国内災害被災者支援事業対象地域
2019年令和元年台風15号・19号被災者支援事業 対象地域
(千葉県房総地域を主対象とする千葉県域全体、宮城県丸森町を主体対象とする宮城県域全体)
2020年令和2年7月豪雨被災者支援事業 対象地域
(熊本県八代市、芦北町、球磨村、人吉市等を主対象とする熊本県域全体)
2021年令和3年7月・8月豪雨被災者支援活動 対象地域
(広島県内及び島根県内を主対象とする令和3年7月・8月豪雨被災地)

実施期間2019年4月1日~2027年3月31日(以後、継続していく予定)
協力機関・団体協力機関
団体
宮城県域
東北電電同友会宮城支部石巻部会、(公財)仙台応用情報学研究振興財団
石巻仮設住宅自治連合推進会、(一般社団法人)石巻じちれん
NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)

熊本県域
九州電電同友会熊本支部、熊本シニアネット
NTT熊本支店、NTTドコモ、(NPO法人)JPF、赤い羽根(ボラサポ)
西日本電信電話株式会社(CLUB NTT-West)、NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)

福岡県域
熊本シニアネット、(NPO法人)ファイブネット春日
NTT熊本支店、NTTドコモ、(NPO法人)JVOAD
NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)

広島県域
(NPO法人)シニアネットひろしま、(NPO法人)シニアネット福山
NTTドコモ、(NPO法人)JPF、呉市社会福祉協議会、地域包括支援センター
西日本電信電話株式会社(CLUB NTT-West)、NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)

島根県域
(NPO法人)シニアネットひろしま
大田市北三瓶まちづくりセンター、北三瓶よろず会、自治会・自主防災会
西日本電信電話株式会社(CLUB NTT-West)、NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)
■背景
 宮城県内では、3.11東日本大震災に対処する数々の被災者支援事業を包含する東日本大震災宮城被災者支援事業を実施し、その最終支援活動であった「宮城地域ICT支援事業」は当初に計画した事業目標を達成し2018年度末で終了しました。
 今後、東日本大震災宮城被災者支援事業と同様に、九州北部豪雨被災者支援事業、西日本豪雨被災者支援事業、熊本地震被災者支援事業、・・・が次々に終了時期を迎えます。そのまま放置すれば、これまでに獲得してきた国内災害被災者支援活動の事業ノウハウ及びICT支援活動拠点を全て失ってしまいます。そこで、2019年4月1日より、「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」を開始しました。

ここでは、以下の3つの事業を実施していきます。
(1) 現地ICT支援活動拠点機能維持事業
 BHN宮城事務所、BHN熊本事務所、BHN広島事務所等の現地事務所機能を継続します。
 地元組織に引き継いだ各種被災者支援活動に対し必要な協力事業を継続します。
(2) 現在実施中の各被災者支援事業から獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業
 BHN宮城事務所では2011東日本大震災宮城被災者支援事業で獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業を実施しました。
 BHN熊本事務所では2016熊本地震、2017九州北部豪雨、2020令和2年7月豪雨等の被災者支援事業で獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業を実施します。
 BHN広島事務所では2018西日本豪雨、2021年令和3年7月・8月豪雨等の各被災者支援事業で獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業を実施します。
 各事務所では獲得した経験・ノウハウのデジタル資料等を活用して地元組織と連携した被災者支援事業を実施します。
(3) 新たに発生する国内災害及び、発生が予知されている南海トラフ巨大地震、首都直下地震等に対しBCP(事業継続計画)的に備えるためのICT支援活動拠点ネットワーク事業等へ取り組みを進めます。更に「事前復興」の視点からデジタル田園都市国家構想等の推進に役立つシニアデジタルネットBHNへの取り組み準備事業を進めます。

 2019年4月以降発生する国内災害に対する緊急時初動活動は本事業に含めて実施します。なお、個別事業資金調達を目指して取り組む場合には、独立した事業として分離スタートさせます。

■2019年度より、スタートした事業内容(2020年度以降も継続します)
【BHN宮城事務所関係】
1. 東日本大震災宮城被災者支援事業終了後への対処
 2019年4月1日、BHN宮城事務所(所長:石垣 正一 氏)を継続し、BHN宮城事務所主催「ICT支援活動拠点機能検討会」を定期的に開催しています。

2. 地元組織に引き継いだ被災者支援活動への協力事業
 地元組織が継承し、宮城県内復興地において開催された「被災者向けパソコン・タブレット研修会」に対し、BHN宮城事務所は研修用パソコン・タブレット及びポケットCO2センサーを貸出して本事業への協力を継続しています。2019年度は8コース、2020年度は7コース、2021年度は3コース、2022年度は4コースが企画・実施されました。

3. BHN宮城事務所 2011東日本大震災宮城被災者支援事業で獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業
 BHN宮城事務所では、東日本大震災宮城被災者支援事業で獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化事業に取り組みました。
 2020年1月、石巻市・仮設大橋団地(自治会長:山崎 信哉 氏)「公開型仮設住宅団地自治会運営管理資料」(第1版)のデジタル化処理、しおり付加処理、プライバシー保護処理、DVD化処理等によりデジタル化作業を完了しました。2020年6月、「原本資料及びデジタル化資料」を(一般社団法人)石巻じちれんの事務所に配備しました。2020年10月、仮設大橋団地自治会運営管理ノウハウ普及のためのプレゼンテーション資料整備を完了し、タブレット等を活用した普及活動の準備を整えました。
  • 旧北上川右岸堤防より仮設大橋団地を背景に元自治会長 山崎信哉氏 (2018年10月11日撮影)

  • 公開型仮設住宅団地自治会運営法が大きな効果を 発揮した具体的事例を話し合った(石垣氏、山崎氏、有馬)(2018年10月11日撮影)

4. 令和元年台風15号・台風19号被災地現地調査活動及びBHN自主事業「令和元年台風15号・台風19号被災者支援事業」実施
 2019年9月に発災した令和元年台風15号は千葉県南部に甚大な台風被害をもたらしました。また、2019年10月に発災した令和元年台風19号は宮城県丸森町・大郷町等に甚大な洪水被害をもたらしました。
 BHN本部は9月19日(市原市、木更津市)及び24日(館山市、鋸南町)へ被災地現地調査活動に入りました。BHN宮城事務所は10月17日丸森町へ被災地現地調査活動に入りました。BHN宮城事務所では、2020年1月より、建設型応急仮設住宅団地が計画された宮城県丸森町及び大郷町を主な支援対象地域として、独立したBHN自主事業「令和元年台風15号・19号被災者支援事業」に取り組み、2022年3月末終了しました。今後、新たな地元要望等が寄せられた場合は「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」で対応することとしています。

5. 獲得した経験・ノウハウを活かし、地元関係組織と新しい取り組み開始
 2021年11月より、「石巻仮設住宅自治連合推進会」の流れを引き継ぐ「宮城県石巻市(一般社団法人)石巻じちれん(理事長 増田 敬氏)」と「復興する被災地においてデジタル社会を発展させるための新しい連携事業」を開始しました。

■2020年度より、追加してスタートした事業(2021年度以降も継続します)
【BHN熊本事務所関係】
1. 九州北部豪雨被災者支援事業終了後への対処
 九州北部豪雨被災地・福岡県朝倉市の二つの応急仮設住宅団地(頓田仮設団地、林田仮設団地)において実施してきた九州北部豪雨被災者支援事業は、当初の目的を達成し2020年3月31日に予定通り事業を完了しました。今後、万一新たな支援活動の必要性が生じた場合は、2019年度より開始している「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」の中で取り組みます。

2. BHN事務所別に獲得した被災者支援事業ノウハウのデジタルキット資料化
 BHN熊本事務所では、被災地が広域に広がる2016熊本地震被災者支援事業、2017九州北部豪雨被災者支援事業、2020令和2年7月豪雨被災者支援事業等に対し効果的に対処するため、「広域災害に対処するネット活用型遠隔地を含むエリアマネジャー制度」を実践しました。加えて、熊本地震被災地では、「避難所フェーズ、仮設住宅団地フェーズ、災害公営住宅団地フェーズ等3種類の支援活動フェーズにおいて、集会所等を基点とするICTを活用した地域コミュニティ再生・活性化のための被災者支援活動」を実践しました。これら支援活動を通じて獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化に取り組みます。
  • 熊本地震被災者 益城中央小学校避難所 JPFモニタリング模様 (2016年7月5日撮影)

  • 熊本地震被災地 益城町・テクノ仮説みんなの家 ICT健康サロン(2018年11月14日撮影)

3. 令和2年7月豪雨被災地情報収集活動及びBHN自主事業「令和2年7月豪雨被災者支援事業」
 2020年7月に発災した令和2年7月豪雨は全国に甚大な豪雨被害をもたらしました。とりわけ、熊本県南部の球磨川流域(八代市、芦北町、球磨村、人吉市等)に甚大な洪水被害をもたらしました。
 BHN本部及びBHN熊本事務所(地元協力組織:熊本シニアネット)では、7月2日より地元関係組織等を通じて被災地情報収集活動を実施しました。BHNでは、建設型応急仮設住宅団地が計画された熊本県八代市、芦北町、球磨村、人吉市等を主な支援対象地域としてBHN熊本事務所の現地支援体制を強化し、独立したBHN自主事業「令和2年7月豪雨被災者支援事業」に取り組んでいます。

4. 2021年デジタル社会推進賞 デジタル大臣賞<銀賞>を受賞
BHNテレコム支援協議会と熊本シニアネットは、2021年10月10日開催されたデジタル庁主催オンラインイベントにおいて、「熊本県被災地における高齢者へのデジタル活用支援プロジェクトチーム」として、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化に多大な貢献した」として「2021年デジタル社会推進賞 デジタル大臣賞〈銀賞〉」を受賞しました。
■2021年度より、追加してスタートした事業(2022年度以降も継続します)
【BHN広島事務所関係】
1.BHN広島事務所が2018西日本豪雨被災者支援事業等で獲得した経験・ノウハウのデジタル資料化
 BHN広島事務所では、2018年西日本豪雨被災地(広島県坂町・呉市等)の仮設住宅団地及び災害公営住宅団地等に住む豪雨災害被災者向けに、復興フェーズ(仮設住宅団地フェーズ、災害公営住宅団地フェーズ)に合わせて各種の工夫を取り入れた「ICTを活用した地域コミュニティ再生・活性化活動」を実施してきました。その一つとして、研修用パソコン・研修用プリンター・ドコモおくダケWi-Fi回線等を活用した「ふれあい型パソコン研修会」を開催しました。一方、2020年初めに始まった新型コロナウィルス感染症は日本国内で繰り返し猛威を振るい、日本国内の多くの国内災害被災地では十分な被災者支援活動ができない状態に陥りました。
 そこで、BHN広島事務所では、コロナ禍においても効果的な被災者支援活動が継続できるように新しいhome5Gルータ、5Gモバイルルータ、タブレット、スマホ、SNS、ポケットCO2センサー等加えた「テレワーク手法を取り入れたコロナ禍における新しい被災者支援活動への挑戦」を開始しました。BHN広島事務所では、2018西日本豪雨被災者支援事業、2021令和3年7月・8月豪雨被災者支援活動に対し実施してきた、「ふれあい型パソコン研修会」及び「テレワーク手法を取り入れたコロナ禍におけるネット活用型被災者支援活動」の経験・ノウハウのデジタル資料化に取り組みます。

2.令和3年7月・8月豪雨被災地情報収集活動及びBHN自主事業「令和元3年7月・8月豪雨被災者支援活動」実施
 2021年7月に発災した令和3年7月豪雨は静岡県・島根県・広島県等に重大な豪雨被害をもたらしました。更に、2021年8月発災した令和3年8月豪雨は長野県・広島県・福岡県・佐賀県・長崎県等に重大な豪雨被害をもたらしました。日本国内災害被災地では、感染防止の観点から県境を跨ぐ被災者支援活動は厳しく抑制されていたことから、BHNテレコム支援協議会では「支援対象地域を広島県及び島根県に絞り、2018年西日本豪雨被災者支援事業の経験・ノウハウを有するBHN広島事務所を基点とするBHN自主事業「令和元3年7月・8月豪雨被災者支援活動」に取り組んでいます。
  • 西日本豪雨被災地 坂町・平成ヶ浜中央公園応急仮設団地・集会所 ふれあい型パソコン研修会 (2018年10月27日撮影)

  • 研修用パソコン、研修用プリンター、home5Gルータ、5Gモバイルルータ、 タブレット、スマホ、SNS、ポケットCO2センサー、コロナ対策キット等 テレワーク手法を取り入れたコロナ禍におけるネット活用型被災者支援活動ツール例 (2021年12月16日撮影)

■2022年度より、スタートした事業内容(2023年度以降も継続します)
 BHN宮城事務所、BHN熊本事務所、BHN広島事務所は、それぞれの事務所開設時に海溝型巨大地震災害・巨大津波災害、内陸型巨大地震災害、広域洪水災害等の大規模広域災害に対し、「ICTを活用した被災者支援活動」を実施してきました。加えて、その後当該地域周辺において発生した新しい国内災害に対し、新たな工夫を加えて「ICTを活用した被災者支援活動」を継続してきました。
 BHN各事務所がこれまでに獲得した経験・ノウハウは大変有用です。経験・ノウハウを継承できるようにデジタル資料化して整備します。今後、新たに発生する国内災害に対応するために開設する新事務所に対し、必要な経験・ノウハウを容易に共有することが可能となります。

 更に、高い確率で発生することが予知されている南海トラフ巨大地震及び首都直下地震等に対し備える必要があります。南海トラフ巨大地震等巨大広域災害が発生すると、通常時に難なく可能であった機器調達等も困難な状態に陥ることになります。
 そこで先ず、第一段階として、BHNの三つの現地事務所が中心となり「事業継続性(BCP)」の視点から、これまでの各事業、2011東日本大震災被災者支援事業(宮城)、2016熊本地震被災者支援事業(熊本)、2018西日本豪雨被災者支援事業(広島)等で調達し活用してきたICT機器を再利用することで可能となる「広域災害後方支援ICT機能整備」を実施し備えます。適宜新しい技術を入れながらブラッシュアップして備えます。

 平時においては、「復興フェーズを迎えた各被災地においてICTを活用した地域コミュニティ再生・活性化支援継続活動」に活用するとともに、各現地事務所の次世代へノウハウ継承研修」に活用します。
 更に、第二段階として、「事前復興」の視点から、デジタル田園都市国家構想等を参考にしながら「シニアによる新しいネットワーク型社会貢献活動事業」への取り組み準備活動を進めます。

 上記を具体化するため、2022年度は4月より毎月一度、3事務所のメンバーが揃って参加する「ネットを活用した国内災害 現地事務所 全体連絡会議」を開催しました。この会議では人道支援活動の基本を振り返るとともに、各事務所がこれまでに獲得してきた「経験・ノウハウのデジタル資料化」及び「既得通信機材を利活用する広域災害後方支援ICT機能整備」の具体化について話し合いました。


国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業
理事(プロジェクトマネジャー)
有馬 修二 

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*BHN 自主事業「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」、事業期間:「2019年4月1日~2027年3月31日(以後、継続していく予定)」は、西日本電信電話株式会社(CLUB NTT-West)、NTTファイナンス株式会社(NTTグループカード)、株式会社NTTドコモ(d POINT CLUB)のポイント寄附にてご支援いただいて、事業を継続しています。
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