東日本大震災 宮城被災者支援事業

2011年3月11日に発生した東日本大震災は東日本太平洋沿岸部地域に未曾有の大惨事をもたらしました。なかでも、宮城県石巻市は最大の被災地の一つでした。被災された方々を対象としたニーズ調査を行った結果、被災地での雇用創出支援・就労支援がその後の重要課題であることがわかりました。
 それを受けて、BHNでは、仮設住宅団地集会所等でのパソコン・インターネット環境整備やパソコン研修を行い、復興期以降の就労やコミュニティづくりを支援する活動を行うこととしました。

事業名宮城県東松島市における被災者の地域コミュニティ支援事業
東日本大震災ICTオープンカレッジ事業
東日本大震災宮城IT支援(国税庁指定寄附金事業)
宮城地域ICT支援事業
受益者対象地域の被災者 約8,000人
対象地域宮城県石巻市、東松島市、南三陸町、女川町、登米市

実施期間2011年8月~2019年3月
協力機関・団体協力機関
団体
・石巻専修大学、復興大学(石巻センター)、(一社)日本テレワーク協会
・石巻市役所、女川町社会福祉協議会、東松島社会福祉協議会、石巻仮設住宅自治連合推進会、(一社)石巻じちれん、伊東義塾、石巻信用金庫、(公財)仙台応用情報学研究振興財団
・日本マイクロソフト(株)、(株)シマンテック
・(株)NTT宮城支店石巻営業所、(株)NTTデータ、(株)NTTデータ(石巻ルネッサンス館)、(株)NTT-ME、(株)NTTぷらら、NTT労働組合
■背景
 宮城県東松島市は仙台市から約30キロ北東に位置し、人口4万3千人余り、日本三景松島の一角を占める風光明媚な町でした。海苔、牡蠣に代表される養殖漁業と農業が盛んな地域であるとともに、仙台市と石巻市の中間に位置する利便性から、サラリーマンのベッドタウンとして人口の増加が期待される地域でもありました。それが、この度の大震災の被害を受け、様相が一変しています。
 市街地の65%が浸水し、家屋は全体の73%が全壊、大規模な半壊、半壊の被害を受け、通勤の足となるJR仙石線も松島海岸駅と矢本駅間が不通になりました。
 当会では、情報通信インフラが未整備な仮設住宅や在宅被災者居住地域で、インターネットを活用して、被災地の地域コミュニティ活動の再生を目指して支援活動を開始しました。
■活動内容
●ボランティアセンター及びテレワークセンターの開設、パソコン教室とパソコン図書館
 BHNは2011年8月に石巻ボランティアセンター/石巻テレワークセンターを開設し、これらを拠点にパソコン教室と、パソコンを持たない人には、自宅で復習できるように整備された中古パソコンを貸し出す、パソコン図書館を実施しました。更に、女川町高齢者向け生きがいパソコン講座を実施しました。
  • 夏休み企画の講習会におばあちゃんと参加(2012年)

●東日本大震災ICTオープンカレッジ事業
 2012年度~2013年度では、石巻専修大学と共同で、被災者の就労支援に役立つ集合型のICTオープンカレッジを開講しました。併せて、牡鹿半島の浜地区に巡回訪問型のパソコン研修会を実施しました。
 BHN及び石巻専修大学(復興大学)が主催したこの「ICTオープンカレッジ事業」は、2015年11月末まで4年間にわたり計6回開催しました。
  • 石巻専修大学ICTオープンカレッジ第2期「応用コース」研修スタート2013年

  • 石巻専修大学ICTオープンカレッジ基礎コース修了された皆さん2013年

●東日本大震災宮城IT支援(国税庁指定寄附金事業)
 2012年7月~2014年12月末の期間、国税庁の確認を得て、宮城県石巻市及び周辺地域の応急仮設住宅団地向けにICT技術を生かした被災者支援活動を、指定寄付金事業として実施しました。
 38カ所の仮設住宅団地集会所を対象にインターネット環境と寄贈された中古パソコン・プリンターを整備し、BHNパソコンコーナーを開設しました。そして、パソコンを整備した仮設住宅団地と周辺仮設住宅団地の自治会役員向けにパソコン研修を実施し、定期巡回設備点検を開始しました。
  • 石巻インターネット研修2013年

●宮城地域ICT支援事業
 上記の国税庁して寄附金事業終了後においても、多くの仮設住宅団地から「BHNパソコンコーナー」の継続希望が寄せられました。これに応えるため、2015年1月より「宮城地域ICT支援事業」をスタートさせました。併せて、地元復興大学に研修用パソコンを貸与してICTオープンカレッジ事業に対する継続要望にも対処しました。その後、地元組織が復興地における新しい地域コミュニティ再生に役立つパソコン教室として継続し、BHNは支援を継続しました。
■成果とその後
  1.  石巻通信ボランティアセンター/石巻テレワークセンターでは、就労者や事業者への業務環境提供、就労希望者のパソコンスキル把握・パソコン研修、求人・求職マッチング相談等を実施しました。 
  2.   ICT設備を活用した幅広い支援活動を通じて、「被災者向けパソコン研修支援」と「仮設住宅団地コミュニティ形成支援」の基本形を確立することができ、現地のニーズに支援内容を合わせながら、現在も活動が続いています。
    最初は恐る恐るパソコンに触れていた人が、今ではカラオケを楽しんだり、イラストを描いたりできるようになりました。また、より高度な操作を身につけ求職活動や仕事に生かそうという人も参加していました。
      受講生からは、「これから先、今まで解らなかった事が出来るようになるのかと想像し、楽しみにしております」「一週間が早くたたないかと、とても楽しみでした」などの嬉しい感想が寄せられています 。 身に付けた操作技術を地域のミニコミュニティ誌の作成や趣味、またパソコンでできる在宅就労や求職活動に生かして頂けるよう、受講生の声に常に耳を傾け教室運営にも工夫しました。
  3.  BHN、及び石巻専修大学(復興大学)が主催した「ICTオープンカレッジ」は大変好評で、徐々に地元組織に実施体制を移しながら、現在に至るまで継続されています。
  4.  石巻市仮設住宅団地でのインターネット環境整備及び自治会役員向けパソコン研修に関するアンケート調査の結果、市や県の情報がリアルタイムに閲覧でき仮設住民へ周知できた、自治連合推進会とのメール交換によりスムーズな事務処理ができた、自治会報やイベントチラシ等を作成し配布できるようになった、との回答が得られました。
    受講者の感想は様々です。 ・1年ぶりにパソコンに触れることができました。今日の日を楽しみにしてきました。
    ・何か一つのことを自分で完成できたら楽しいと思います。
    ・パソコン本当に便利だと思います。使いこなせるともっと楽しいと思います。
    ・少しずつ覚えていきます。汗だくのパソコン教室ありがとうございました。
    ・新しいものをしっかり吸収していく大切さを学びました。

  5.  震災後の復興が長引く中、シニア世代が懸命に頑張る姿は、被災地の全世代に勇気を与えました。
  6.  2018年度当初2カ所向け(仮設大橋団地、大森第3団地)に継続した支援活動は、住民退去が進み設置していた全てのICT設備を回収して2018年8月末に終了しました。
     最大規模の仮設住宅団地(約542世帯)であった石巻市・仮設大橋団地(自治会長・山崎信哉氏)では、「公開型仮設住宅団地自治会運営管理」が実施されました。この取り組みの中には、後世に語り継ぐべき多くの教訓が包含されていると考えました。
     そこで、2018年5月より自然災害大国・日本において、他の被災地復興事業に「繋ぐ」ため、BHN宮城事務所(所長・石垣 正一氏)では山崎 信哉氏と共に、これらの関係資料を整備し、ノウハウ化していく事業に取り組んでいます。2019年1月、「整備済み資料からデジタル化に向けた作業」を開始し、作業を継続しています。現在は、それらの支援活動を「宮城地域ICT支援プロジェクト」に集約して実施し、2019年度より新たにスタートさせた「国内災害ICT支援活動拠点ネットワーク事業」で継続実施しています。
  • 山崎信哉元自治会長が統率した公開型仮設住宅団地自治会運営管理資料
    整備を終えた7年間記録資料2018年

  • 公開型仮設住宅団地自治会運営法が大きな効果を
    発揮した具体的事例を話し合った(石垣氏、山崎氏、有馬)2018年

ご寄附・助成金を頂いた企業・団体の皆様

    ●宮城県東松島市における被災者の地域コミュニティ支援事業及び東日本大震災ICTオープンカレッジ事業
     (三菱商事復興財団、Symantec Corporation、震災寄附、日本マイクロソフト株式会社、 社会福祉法人中央共同募金会、個人・法人等)
    ●東日本大震災宮城IT支援(国税庁指定寄附金事業)
     (指定寄附金 セガサミーホールディング株式会社、 国際ソロプチミスト新居浜みなみ、 個人・法人等)
    ●東日本大震災宮城地域ICT支援
     (Symantec Corporation)
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BHNは、情報通信技術(ICT)を活用し、開発途上国や国内外の被災地の人々の安全・安心を守り、生活環境の改善や社会的課題の解決を目指しております。このため、多くの方々の温かいご支援・ご協力を必要としています。BHNでは世代を問わず幅広い分野の方々の熱意と持てる力、これまで蓄積されたご経験を色々な方法で役立てることができます。皆さまに合った方法でBHNの活動に是非ご参加ください。

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