タイ・ミャンマー避難民キャンプでの教育訓練、設備改善事業

ミャンマーは1948年にビルマとして英国から独立した直後から、人口の約3割を占める少数民族が、国内各地で、より広範な「自治権」を要求して武装蜂起してきました。その後「民政復帰」の流れに伴い和平の機運が出てきていましたが、2021年に軍がクーデターで政権奪取して以降再び内戦が激化し、軍の攻撃も激しくなり、従来にも増してタイの国境地帯に逃げる難民も激増し、これらの人たちへの支援が急務になってきました。

事業名ミャンマー避難民キャンプ(タイ国ターク県)電気設備工事教育訓練とパソコン教育環境整備事業等
対象者ミャンマー内戦から逃れてタイ側の難民キャンプに避難した人々
開催場所タイ側のミャンマーとの国境エリア

実施期間2024年1月~12月
資金源外務省資金
協力機関・団体協力機関
団体
日本財団、TBC/ KRC(ともにタイ側の団体)
【背景】
 ミャンマー(旧ビルマ)には公称135の民族が住んでいて、そのうち7割がビルマ族、残り3割が少数民族と言われています。1948年のイギリス独立直後から、多くの少数民族が広範な「民族自決権」を要求して武装闘争を続けてきました。 ミャンマー国内ではクーデター以降「軍」対「少数民族武装勢力+民主派連合軍(=PDF)」の戦いが激化し、特に軍は空軍による無差別爆撃も増やしていることから、ほとんどの少数民族がミャンマーの国境地帯に居住している関係で、安全な国境隣接地帯、更には隣国のタイ等に逃げ込む人が年々増加してきました。 結果、タイ側のミャンマー国境地帯にはミャンマーからの避難民(以下、難民)のためのキャンプがいくつも設営されていますが、近年、ウクライナ、ガザ等での紛争による支援も増え、ミャンマー難民への国際的な支援は細ってきました。 タイ側キャンプの難民は、生命の安全は確保されているものの、キャンプ外での仕事は認められておらず、キャンプ外からの支援によって生活を立てているため、若者たちはキャンプ内の学校を出ても職業経験を積むことができずにいます。 タイ国政府は、近隣国から膨大な数の難民が流入することを危惧して、国連が定めた難民の地位を保護する「難民条約」を批准していません。その結果、ミャンマーの内戦から逃れてきた難民は正規には保護されていません。 しかし、現実には百万人を超えるミャンマー人たちがタイに逃げたといわれていて、タイ政府も人道的な配慮からミャンマーとの国境地帯に9カ所ほどの難民キャンプを設置して国内外からの支援が受けられる体制としました。

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BHNとしては、タイ側のキャンプに避難した人たちは、これまで何年にも亘ってミャンマーで支援してきた人たちと重なること、更には、BHNのカレン州事務所で採用している職員たち数名がこれらのキャンプに家族を残していることもあり、キャンプ支援団体と接触して、我々からの支援は大歓迎である、との回答を得ることができました。 BHNでは、勉強意欲のある若者たちを集めて、電気の基本知識を教育し、彼らを作業員として雇い、キャンプ内で必要とされている、「緊急連絡装置(日本の防災無線の簡易版)」の建設、「キャンプ事務所の電化とコンピューターの設置」、「学校の電化とコンピューター教育の環境整備」等、順に工事の技術レベルを上げながら、ソーラーシステム工事の実務経験を積ませることで、将来ミャンマーに帰国しても就職に有利なように、訓練と合わせてキャンプ内で必要な設備の建設も行うという、「一石二鳥」のプロジェクト計画として外務省に提案をして資金支援を受けました。 国境地帯での難民支援事業は2024年1月からスタートしましたが、タイ政府の基本的な難民への対応の考え方から、BHNがタイでNGO登録することは非常に困難(そのため法人登記もできず銀行口座も開けない)でした。そこで、キャンプに住む人たちへの支援のために創設された多国籍NGOであるTBC(The Border Consortium)を通じてタイ政府から承認を得て、支援を届けることにしました。 また、キャンプ内においては、居住するミャンマー人難民の中でも殆どがカレン族であることから、キャンプ内の自治組織であるKRC(Karen Refugee Committee)を通じて、研修生の選定から始まって、設備の設置場所の選定に至るまで、キャンプ内での活動には全面的な協力が得られています。
  • キャンプ内の事務所

  • キャンプ内の家屋

  • 学校の教室

  • 学校の入り口

【成果】
 BHNはこれまで、長引く内戦の最中、全くインフラの整っていない少数民族武装勢力のエリアで、ソーラーシステムの普及等の活動をしてきましたが、NGO活動に対する軍事政権の締め付けは厳しく、国内各地で衝突も起きて活動に危険もあることから、昨年外務省から委託された事業も進捗が大幅に遅れて、今年末まで1年間の延長をしました。 本事業はスタートしてまだ4か月でありBHNとしても、現場調査、タイ政府の承認手続き、関係者との調整・契約などを行っており、5月から研修生の教育を始める予定となっています。
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