東日本大震災 飯舘村避難者支援事業

飯舘村は、2011年3月の東日本大震災により発生した原発事故の影響で、全村に避難指示が出されました。先祖代々住み続けた土地に根差して、飯舘牛やトルコ桔梗などのブランド農産品を生み出し、3世代や4世代が同居して穏やかな生活を営んでいた村は、原発事故を境に一変し、全村民が仮設住宅や借上げ住宅へ避難しました。 避難生活では、田畑での農作業や牛の飼育ができなくなり、身体を動かすことも少なくなるとともに、住居空間は村の自宅とは比べようがないほど狭く、偏りがちな食生活のため、健康を維持することが重要な課題となっていました。また、親しい隣人はもとより家族さえもバラバラに分かれての避難生活になってしまったことから、様々な不安の中でストレスを募らせる方も多く、コミュニティの崩壊も大きな問題でした。
その後、徹底的な除染とインフラ整備の進展により、 2017年3月末に避難指示が解除となりましたが、震災から9年目となる今も、住宅の修復、買い物や病院への交通手段等、生活上の課題が多く残されており、多数の村民が帰村し平和な村が再生されるにはまだ相当な時間がかかると思われます。

事業名東日本大震災 飯舘村避難者支援
受益者仮設住宅及び借上げ住宅へ避難された方々 約5,000人
対象地域福島県飯舘村

実施期間2011年4月~2020年
協力機関・団体協力機関
団体
認定特定非営利活動法人 災害人道医療支援会(HuMA)
NTT労働組合ドコモ本部、飯舘村社会福祉協議会
浦和明の星女子中学・高等学校、国立極地研究所
■プロジェクト目標
 長期の避難生活で避難者の状況も変化してきました。その変化と村民のニーズをくみ、内容を変えながら現在も支援活動を続けています。開始から6年半の主な活動は通信設備提供とPCスキル研修によるコミュニティ支援や健康相談会、歩け歩け運動、マッサージ会などの健康維持支援、子どもたちを励ますための南極教室、手作りザックの贈呈などでした。さらに7年目からは、帰村が始まったことから、村へ帰還を支援するための村民自宅周辺の草刈り大作戦等をメニューに加えて支援活動を続け、2017年度からは「花いっぱいの村づくり」に向けて花桃の苗の植樹、2018年度からはICTを活用したお年寄り見守り支援も実施。
  • 東日本大震災に伴う福島原発事故の発生による飯舘村。
    全村避難指示により約6200人が避難生活を余儀なくされた。

  • 飯舘村の約300カ所もの仮置き場にフレコンバックに詰められ
    山積みになっている除染廃棄物

  • 未だに残る除染廃棄物の山

■活動内容
  1. 通信設備提供によるコミュニティ支援
     真っ先に実施したのは情報通信設備を提供することにより避難生活を根底から支えることでした。仮設住宅、学校、幼稚園等29カ所へパソコン、プリンタ等を設置し、メール、インターネットを利用可能にしました。また、避難先にできた自治会活動を支えるため、10の自治会のホームページ立上げを支援し、村役場から配属されたIT担当者に100回以上にわたるパソコン研修会も行いました。 また、2018年度から新たに、飯舘村健康福祉課及び飯舘村社会福祉協議会の協力を得て、ICTを活用し電話回線に接続して、緊急ボタン1つで、あらかじめ設定した家族等の連絡先に緊急通報することができる『遠隔見守り端末』を、お年寄りが暮らす村民宅に設置して、遠隔での見守り支援活動を開始しました。これにより、いろいろな事情により高齢者のみの1~2人世帯の帰村者には、「常に健康上の不安があったが、緊急時に家族等へ素早く通報することができ、安心して生活することができるようになった」と喜ばれました。
  • 避難先自治会(10カ所)でのコミュニティ再生に向けたパソコン技術支援
    <2011年度~継続中> 

  • エクセルの使い方などの技術相談 <2011年度~継続中>

  • ボタン1つで緊急通報できる「遠隔見守り端末(本体)」<2018年度~継続中>

  • おばあちゃんがペンダントスイッチを使って動作確認

  1. 健康維持・向上支援
     生活環境が芳しくない中で次第に重要性を増していった健康問題に対処するため、認定NPO法人災害人道医療支援会(HuMA)の協力を得て、健康相談会(2012年度~2015年度:4年間)を計53回開催し967人の方が訪れました。また、飯舘村社会福祉協議会が開催する毎月のお茶のみ会の場で、歩数計を配布して歩け歩け運動(2013年度~2016年度:4年間)を実施しました。歩数計継続利用者は622名に上りました。またマッサージ会(2013年度~2017年度:5年間)は173回実施し、延べ1,426人の方がマッサージを受けました。  
  • 避難生活者の健康相談会の開催
    <2013年度~2017年度>

  • マッサージ会の開催
    <2012年度~2015年度>

  1. 子どもたちを励ます支援
     避難生活を余儀なくされている飯舘村の子どもたちを励ます支援として、県立相馬農業高等学校飯舘校へ授業や調べものに使うパソコン30台(2013年度)を寄贈しました。また仮設の草野・飯樋・臼石小学校では、国立極地研究所の協力を得て2013年度に南極教室を開催しました。昭和基地の隊員と衛星テレビ電話で繋がり、南極の面白い話や子どもたちからの矢継ぎ早の質問で盛り上がりました。その後2015年度からは草野・飯樋仮設幼稚園の年長組の園児へ、そして2018年度からは新設されたまでいの里のこども園の園児に、BHN会員の女性と浦和明の星女子中学・高等学校生徒などの協力による手作りの体操着ザックとマスク等の贈呈を実施しました。
  • 南極昭和基地と衛星回線で結び仮設の草野・飯樋・臼石小学校で
    南極教室を開催<2013年度>        

  • ①幼稚園児へのプレゼント<2015年度~継続中>

  • ②幼稚園児へのプレゼント

  • ③幼稚園児へのプレゼント

  1. 帰村の支援
     2017年4月から避難指示が解除され、帰村が始まりました。これに伴い、新たに帰村を支援する活動を始めました。帰村する方は高齢者が多く、村の自宅周辺の草刈りは大きな負担でした。そこで2017年度、BHNはNTT労働組合ドコモ本部及び飯舘村社会福祉協議会の協力を得て、全国から集まったボランティアメンバーにより7週間にわたり「草刈り大作戦」を実施しました。
    また、昔の美しい村に少しでも近づけるよう、2017度から3年計画で合計600本の「花桃植樹」を実施しています。最初の2017年度は大火山つつじ公園に200本を植樹しました。翌2018年度は8月に「いいたてスポーツ公園」で、村長とBHN理事長他による記念植樹、10月に村民等60名参加で200本の植樹を行いました。そして3年計画最終の2019年度は新設されるパークゴルフ場に200本を植樹しました。
  • 6年間伸び放題となった宅地周辺

  • 草刈り支援を実施<2017年度>

  • 花いっぱいの村づくりに向け花桃の植樹<2017年度~継続中>
    (2018年度:いいたてスポーツ公園オープン記念植樹)

  • 造園家の方に指導いただきながら丁寧に花桃を植樹

■成果

  1. メール、インターネット、ホームページ等の情報ツール提供により避難生活の安全・安心を高めるとともに、コミュニティの再生・活性化に貢献しました。
  2. 健康相談会、歩け歩け運動、マッサージ会等により、避難生活での健康維持・向上をサポートし、ストレス軽減の効果も確認できました。
  3. 子どもたちを励ます支援では、大自然や科学への関心を高め、被災地でのICT教育を進展させるとともに、社会からの応援や愛情を感じてもらうことができました。また、BHNを起点として社会貢献活動を主婦や中高生にまで広げることができました。
  4. 村民の自宅周辺の草刈りにより、帰村の負担を軽減し、早期帰村の促進に役立ちました。また、多数の村民が参加した花桃植樹イベントにより、美しい豊かな村づくりを一歩進めることができました。
  5. 遠隔見守り端末を最初に設置したお宅は、80歳を超えるお年寄り夫婦と娘さん夫婦の4人家族で暮らしていますが、「昼間は若夫婦が勤めのため留守になるので、老夫婦二人だけになります。今回このような緊急通報のための端末を設置していただき、何かの時には連絡がとれて安心できます。」と感謝されました。

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