エーヤワディ地域における防災支援、及び保健衛生意識向上のためのモデル事業(2019年12月完了)
本事業では、災害に対する脆弱な地域である南部デルタ地帯で、263村への情報伝達システム
(Community Addressing System : CA システム)の設置とワークショップ及び防災研修の実施、ならびに既設CAシステムのモニタリングを実施しました。
また2015年からは、上記内容に加え。112村へハザードマップの作成をしました。また2017年からは、上記内容に加え、CAシステムを利用した住民の保健衛生意識の向上のための活動を行いました。
2019年後半からは小学生に対しては、視聴覚教育を行い、健康知識の向上を図るトライアルを実施。
事業名 | 南部デルタ地帯における情報伝達システムを活用した住民の生活環境改善事業及び防災支援事業 |
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対象者 | 263村落、266,000人(2019年12月までの予定も含む) |
対象地域 | ミャンマー連邦共和国(南部デルタ地帯);ボガレイ郡、ピアポン郡、デダイエ郡、ラプッタ郡 ヤンゴン地域:タンリン郡、チャウタン郡、クンギャンゴン郡 |
実施期間 | 2008年6月~2019年12月 |
協力機関・団体協力機関 団体 | (特活)SEEDS Asia |
- ■背景
- ミャンマーでは毎年のようにサイクロンの被害や大雨による洪水、土砂災害が頻発しています。特に2008年5月のサイクロン・ナルギスの襲来で、ミャンマー南部デルタ地帯(エーヤワディ地域)を中心に、死者・行方不明者13万8千人を超える甚大な被害が発生しました。被害を大きくした要因の一つとして、世界でも最貧国の一つであるミャンマーでは、官民の防災意識が低く、シエルターや警報システム等の防災インフラが未整備だったことがあげられています。
南部デルタ地帯は、携帯電話のつながらない地域が残る辺境地であり、かつ高い津波のリスクを抱えています。そのため、サイクロン・ナルギス後、シェルターが建設されましたが、早期警報システムがなくボトルネックとなっています。特に農村地域や貧困層が多く居住する地域には、情報が伝わりにくいために災害に対する脆弱性が高く、緊急時に住民へ迅速かつ適切な防災情報を流すための情報伝達システムの構築が必要とされています。
一方、保健衛生・健康意識の向上、並びに保健・医療サービスの現状を見てみますと、南部デルタ地帯の保健・衛生環境の劣悪な状況、特にミャンマーでは都市部と農村部の格差が大きいと言われています。南部デルタエリアはほとんどが低地帯であり、村落から町への移動は舟が大半であり、農村部では近くに診療所が無いため、病院に行くには1~2日を要します。エーヤワディ地域の平均寿命は61歳と短く、乳幼児死亡率と5歳以下の死亡率が高く、ミャンマー国内ではマグウエイ地域についで劣悪な環境です。
このような現状を改善するために保健衛生・健康意識の向上の事業を行いました。
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事業地での災害の写真
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- ■活動内容
- 新規CAシステムの設置
ソーラー発電システムとスピーカを組み合わせたCAシステムを263村に設置しました(2019年12月までの予定も含む)。対象となる村は、サイクロン等の被害を受けやすい低地の沿岸地帯から選定しました。その後、村の関係者から情報を集めて基本設計を作成し、物品の調達、設置工事をすると同時に、設置後の保守運営を担うCAシステム運営委員会を構成しました。
- 新規・既設CAシステムのモニタリング
CAシステム設置後、システム構成機器の初期不良や瑕疵(かし)がないか、かつ事業成果を住民から確認するためにモニタリングはかかせません。本事業では設置後1年以内にモニタリングを実施。
- ワークショップ及び防災研修
・CAシステムシステムを設置した村の代表者を対象に、保守・管理ワークショップと防災研修を実施しました。
・防災研修では、移動式防災教室*を開催し。サイクロン、高潮、洪水等の自然災害が発生するメカニズムについて模型等を使って説明し、それによって起こる被害、避難方法等を伝えました。
*2009年頃からミャンマーで移動式防災教室(Mobile Knowledge Center)の開催実績がある(特活)SEEDS Asiaと連携して実施しました。 - ハザードマップの設置
エーヤワディ地域4タウンシップで脆弱性の高い112村(2019年12月までの予定も含む)のハザードマップを作成し、設置しました。設置時には、村人全員を集めて講習会を開き、参加者全員に縮小版ハザードマップを配布しました。また、学校の掲示板にも設置し、授業の中で説明しています。 - 保健衛生意識向上のためのモデル事業
2018年からは新たに住民の保健衛生意識の向上のための活動を行いました。モデル地域(4郡、各郡10村の計40村、2019年12月までの予定も含む)を選定し、その地域のベースライン調査を実施し、そのデータをもとに、郡ごとに健康状況報告書を作成しました。保健衛生意識向上のため、その報告書を村人にフィードバックするため村ごとに報告会を開催しました。またモデル地区の調査報告書、及びミャンマー保健省作成のデータをもとに保健衛生向上のためのメッセージ集を作成し、CAシステム利用してその内容を村人に放送しました。 - 小中学生に対して、視聴覚教育を行い、健康知識の向上を図る
健康状況報告書の要旨、及びメッセージ集等を基に冊子及びDVDを作成しました。各郡のモデル校(小中校)を1校選定し、ソーラー発電システムとテレビを組み合わせた視聴覚システムを設置し、その健康知識の向上を内容としたDVDを利用し、2019年後半から視聴覚教育のトライアルを実施。
- 新規CAシステムの設置
ソーラー発電システムとスピーカを組み合わせたCAシステムを263村に設置しました(2019年12月までの予定も含む)。対象となる村は、サイクロン等の被害を受けやすい低地の沿岸地帯から選定しました。その後、村の関係者から情報を集めて基本設計を作成し、物品の調達、設置工事をすると同時に、設置後の保守運営を担うCAシステム運営委員会を構成しました。
- 活動の写真1
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テレビ設置後の試写会
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助産師さんによる授業光景
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初めてのビデオに喜ぶ生徒たち
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- 活動の写真2
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村人の多く集まる場所に設置した掲示板のハザードマップ
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移動式防災教室(Mobile Knowledge Center)を利用した防災研修
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- ■成果
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- CAシステムにより、当該村落住民への情報の一斉同報が可能となり、非常時の緊急情報はもとより平常時の行政情報・イベント情報、学校からの連絡事項等情報伝達が容易となりました。
- 防災研修、ハザードマップにより、災害時の避難先、避難経路、避難手段が明確になり、自らの判断で避難行動をとることが出来るようになりました。
- CAシステムから放送される衛生・健康に関するメッセージ、及び住民の保健衛生意識の向上により、罹患率の減少が期待できる。また住民の保健衛生・健康状況の最新のデータが把握でき、医療行政に反映することが可能となりました。
- 小中学生に対して、視聴覚教育を行い、健康知識の向上を図ると同時に視聴覚教育に高い関心をもつようになることが想定されます。学校で学んだ防災知識、保健衛生知識が家族にも話されようになります。
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