ミャンマー カレン州・モン州紛争被害者支援電化事業

ミャンマーでは、長年続いてきた少数民族と政府軍との内戦によって多くの人が被害をこうむっています。特にEAO(少数民族武装勢力 = Ethnic Armed Organizations:以下、EAO)が支配してきた地域に住む人々は、国や地方自治体の行政サービスも受けられず、国際的支援もほとんど届いてこなかったため、インフラもほとんどなく過酷な生活状況の中でこれまで暮らしてきました。

しかし、2015年10月15日にミャンマー政府とKNU (カレン民族同盟:以下、 KNU )を含む8つの少数民族武装勢力グループが停戦に合意したことを受けて、これまで閉ざされてきた地域にも、支援を届けることができるようになりました。 BHNは、少数民族武装勢力の支配・影響が及ぶこれらの地域で、長年にわたる支援活動の経験がある日本財団とのパートナーシップ事業として、 KNUタトン地区をスタートとしてソーラー発電を使った無電化村の住宅への電化を行うことになりました。2016年から始まったこの事業では、その後も多くの武装勢力のエリアにも拡大して、毎年継続的に実施され、2023年10月末(第5期終了時点)までに、約29,000軒の家庭(約13万人を超える人々)に電気を届ける活動をしてきました。

また、この電化事業を通じて武装勢力の人たちに『内戦を止めると、今よりずっと良いことが起きますよ。』(BHNではこれを「和平の果実」と呼んでいます)という事を示すことにより、停戦合意への道筋を作る事も、BHNの事業の大きな目的です。

しかし、2021年2月に軍がクーデターを起こし、それ以降、軍側とこれに対抗して武器を持って戦う民主派勢力との対立で国内が混乱・分断され、さらにはこの対立に一部のEAO が民主派について軍と戦うなど、情勢は混とんとしてきています。 この結果、EAO地域の住民の生活は一層苦しくなっている状況です。 BHNではこのような対立の中にあっても,せっかく安定してきた生活を壊したくないとして、一方の側につくことなく中立を守っている(従い村の平和も保たれている)EAOのエリアにはこれまで通りの支援を継続しており、第5期の終了後にも2023年1月以降、安定が保たれている村々への支援を継続しています。

事業名外務省無償資金事業
ミャンマー・カレン州・モン州の少数民族地域における生活環境改善のための電気事業
対象者1.学校の電化:10校、約3,200人の生徒・教員
2.医療機関の電化:17カ所の病院・クリニック、2,800人余りの医師・看護師・利用者
3.家庭の電化:3,955世帯、約17,000人
対象地域カレン州・モン州のEAO地区

実施期間第1期:2023年1月1日~2024年12月31日


◆2022年までの事業についてはこちらをご覧ください。
協力機関・団体協力機関
団体
外務省、(公財)日本財団
■プロジェクト目標
カレン州・モン州の少数民族地域に電化された学校、医療機関、個人宅が増え、教育・医療サービス及び生活環境が改善されます。
■ポイントと活動
【ポイント】
  1. 支援対象村の世帯にソーラー発電装置が設置され、住民が便利で安心できる暮らしを実感できるようになります。

  2. 住民がシステムの適切な保守・運用方法について理解・実践し、継続的な運用ができるようになります。

  3. 学校に電気を提供することで、早朝・夜間の授業や宿舎に帰ってからの勉強に役立ち、また、コンピュータ教育設備も建設して卒業後の就職に役立てています。
  4. 僻地にある病院・クリニックでは、患者の診断記録が全く手書きだった物をコンピュータで保管することにより効率が高まり、また電気があることで、夜の緊急対応もできるようになります。


【活動】
  1. 復興のためのパートナシップ事業
     ミャンマー政府、及び少数民族武装勢力(EAO)間の一層の信頼関係を図るため、これまで長年にわたりミャンマーで少数民族との和平交渉に携わってきた日本財団(※1)の助言とサポートを受けながら、計画立案から実施に至るまで一貫して双方の連携・協力のもと進めています。

  2. 質の高い工事を行うための準備
     現地の工事施工業者(以下、業者)に発注して質の高い工事を行うためには、業者の入札時から工事実施までに様々な配慮や対策が必要です。本事業では各業者の技術レベルの精査、機材の詳細な性能試験の実施、 さらに標準工事方法の指定、工事演習による業者への指導の徹底等、長期の使用にも耐えられるしっかりとした工事が出来るように、多くの時間と労力を掛けています。

  3. 住民の理解を得るために
     業者を伴って事業地を訪問し、本事業が日本の支援によって実現していること、工事内容やスケジュール、機材のメンテナンスの必要性、将来的に必要になるバッテリー交換のための資金計画等を、住民に対して説明しています。

  4. 現地に最大利益を生むために
     ソーラーパネルを固定する支柱の一部の部材は、村民が加工製作を行いました。これは、現金収入を得られる仕事が少ない村で、貴重な雇用の機会であり、村民の収入源になりました。その後、工事業者が1日に1チーム 10~15軒の設置を行い、BHNスタッフが順次完了検査を行います。
     また、完了検査後も各村を訪問し、システムが正常に作動しているか、利用者がシステムを適切に使用しているか、どの様に活用しているか、問題に対して適切な対応ができているか等、チェックリストを使った聞き取り調査によるモニタリングを行っています。

  5. 電気技術者「システムサポーター」の育成・指導
     第2期以降、私たちはエリアごとに村から推薦された村人を(「システムサポーター」として)雇用して、実際の工事や修理に携わることで自分たちの村の電気技術者になるように指導してきました。 その後の事業期間にも、村のシステムサポーターを追加雇用して、地域ごとに配置しています。


※1:日本財団会長は日本政府から「ミャンマー国民和解担当政府代表」に任命されています。
■成果
(「システムサポーター」として)第2期以降に雇用された村人は、彼らの村の電気技術者になるための、BHNによる育成・指導研修を経て、請負業者のチームメンバーとしてすでに設置作業に参加しています。

これまで、2016年の第1期から2022年10月に終了した第5期までに、BHNでは約29,000軒の家庭(人口で約13万人)にソーラー発電で電気を届けてきました。
また、設置したソーラーシステムは、バッテリーさえ交換すればかなり長期間の使用ができます。そこでこれまでの工事期間中に対象となった村から推薦のあった若者たちを、研修訓練した上で、設置の工事あるいは修理作業に参加させて、「村の電気屋さん」となれるように「システムサポーター」として配置しました。

これまでにカレン族のKUN(Karen National Union)に属する武装勢力は、一部を除きほとんどがこのプロジェクトに参加してきたことから、当初から目的としてきた「政府・軍と少数民族の間の信頼関係創出」もかなり進展してきました。

しかし、残念ながら2021年2月に軍がクーデターを起こし、民主政権を倒して以降、これまで折角停戦に参加していた武装勢力の多くが、民主派武装勢力を支援して反軍闘争に参加したため休戦が破棄され、BHNが安全に活動できる地域が狭まってきてしまいました。
そんな経緯から、今回2023年1月からスタートした事業では、中断期間が長引いたことから、事業期間を1年延長して24年末までとし、事業内容の変更等も含めて具体策を検討中です。

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